<性格とがん、関連なし>(東北大学2003年)


 宮城県民30,277人を7年間追跡したところ、「神経症的傾向」「外向性−内向性」「逸脱傾向」「律儀さ」という性格傾向は、がんの罹患リスクと関係なかった。東北大学公衆衛生学のグループによるこの研究は、米国立がん研究所ジャーナル2003年6月4日号に報告された。
 1990年、宮城県の14町村に住む40-64歳の男女30,277人に調査を行った。1960年代に性格とがんの関連性を提唱した、英国の心理学者アイゼンクの調査票を用いて、「神経症的傾向」「外向性−内向性」「逸脱傾向」「律儀さ」という4種類の性格傾向を点数化した。
 この調査の時点で、すでにがんにかかった既往のある人が671人いた。調査の時点でがんの既往のない健康な人たちを、その後7年間追跡したところ、986人が新たにがんに罹患した。

■がん罹患と関連なし
 その結果、調査の時点ですでにがんにかかっていた人について分析すると、「神経症的傾向」が強いグループほど、こうした人の割合が多かった。
 続いて、調査の時点でがんの既往がなかったにもかかわらず、その後新たにがんに罹患した人について分析した。すると、「神経症的傾向」が強いグループでも、弱いグループでも、がんの罹患率に差はなかった。つまり、がんになった「結果」として「神経症的傾向」が強まるけれども、「神経症的傾向」が「原因」でがんになるわけではないことを示唆する結果だった。
 また、「神経症的傾向」以外の三つの性格傾向(「外向性−内向性」「逸脱傾向」「律儀さ」)については、分析方法にかかわらず、がんとの関連を認めなかった。

■最大規模の研究
 この研究は、「がんと性格」に関する研究としては、これまでで最大規模だ。また、性格と「がんの既往」について「断面研究」としての分析を行うと同時に、性格と「がんの罹患」について「前向きコホート研究」としての分析も行った。そのため、性格とがんの、どちらが「原因」でどちらが「結果」なのかという、両者の時間的前後関係を、正しく評価できたという長所がある。
 短所としては、これまでで最大規模の研究といっても、ひとつひとつのがんについてみると、胃がん(229)、大腸がん(186)、肺がん(108)、乳がん(87)と、それほど多数ではなかった。そのため、乳がんなど個別のがんに性格がおよぼす影響まで、はっきり否定することはできなかった。  したがってさらに研究が必要だが、全体としては、「自分はがんになりやすい性格ではないか」などと、あまり思い悩む必要はないことを示唆するデータと言えるだろう。

研究デザイン 前向きコホート研究。
出典 Nakaya N, et al. Personality and the risk of cancer. Journal of the National Cancer Institute 2003;95:799-805.

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