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以前の「ひとこと」 : 2002年11月後半




11月16日(土) ポリオミノとポリアモンドのタイリング

 正方形がつながったものをポリオミノ(polyomino)と呼び、正三角形がつながったものをポリアモンド(polyamond)と呼びます。(「つながった」という表現はあいまいですが、感覚的に書きます。) 「ポリ」(poly-)というのは複数の、とか多数の、とかいった意味の接頭語で、ポリエチレン(エチレンがたくさんつながった高分子)なんていうのが有名な使われ方です。

 ここの「ポリ」という言葉のところを具体的な数を表す言葉と置き換えると、正方形なり三角形なりがいくつつながったものなのかを限定することができます。ここで使われる数を表す言葉は、1:モノ(mono-)、2:ジ(di-)、3:トリ(tri-)、4:テトラ(tetra-)… というおなじみの接頭語を用います。

 昨日、正方形6個によるヘキソミノや正三角形8個によるオクタモンド(でいいのかな?)の中で、タイリングできないものはあるんだろうか、という疑問を書いたら、早速たいへん詳しい情報をいただきました。google で“polyomino, tiling”検索をかけたらたくさんの情報があったそうです。ありがとうございます。

 こちらのPolyomino, polyhex and polyiamond tilingというページを教えていただきました。これによると、全てのヘキソミノと全てのオクタモンドはタイリング可能だそうです。ポリアモンドに関しては、三角形7枚のもの(ヘプタモンド)には唯一タイリング不可能のものがあるようで、これはどんな形なんだろうとちょっと考えてみました。

 上記のページでは、タイトルにあるようにpolyhex、つまり正六角形をつないだ形の図形についても情報があって、とても面白いです。

 ポリオミノやポリアモンドの名前を見ていると、有機化合物の命名法を思い出します。ちょっと調べてみると、非常に有用な面白いページがありました。化合物命名法談義というサイトは、内容が非常に豊富です。 『立体化学入門』www版。この本、昔勉強しました。有機分子の三次元構造に関する基本的な感覚を身に付けるにはよい入門書だと思います。 また、おもしろ有機化学ワールドというページも、取り上げられている話題がとても面白いです。いずれもお勧めです。

 <おまけのひとこと>
 ちなみに、正方形7個によるヘプトミノは108種類あって、そのうち3個だけがタイリング不可能なんだそうです。以後、正方形の数が増えるにしたがって、タイリング不可能なパターンの数も増えてゆきます。三角形のポリアモンドの方も9個以上になるとどんどんタイリング不可能なものの数が増えていっています。7個と8個のところで唯一逆転が生じているのが面白いところです。
 タイリングできないヘプトミノ3種のうち、穴あきの1つはだめだろうというのはすぐに想像がつくのですが、あとの2つはどんな形だろうと考えています。上記のページには、ファイル名から想像するにおそらくPostScript形式の答が載っているのですが、まだ見ていません。




11月17日(日) 紙のリングを組むモデル

 今年の7月末から8月の第1週のあたりにかけて、「表紙のひとこと」で紙の輪を組んで作る模型をいくつかご紹介しました。あそびをせんとや・分室の方に、その集合写真を載せておいたのですが、一番上の段の左から4番目のモデル(下左)を作ってみたいというリクエストをいただきました。改めて写真を撮ってみました(下右)。写真としてはこの角度からがきれいかな、と思います。

 型紙はこちら(star4-3.pdf:6kbyte)です。十字手裏剣のような形が3枚あります。切り込みを4箇所に入れて組みます。パーツは3つとも同じ大きさですが、切り欠きの入れ方が3種類とも違っていて、一番内側のものが切込みが「外・外・外・外」になっているパーツ、2番目が「外・内・外・内」、そして一番外側に来るものが「内・内・内・内」に切り欠きがあるパーツになります。

 パーツの数も少ないし、比較的作りやすいかと思います。紙が厚いほうがいいので、小さく作ったほうが(相対的に紙が厚くなって)よいかと思います。型紙の切り欠きの図示は、ちいさな長方形を描いていますが、使用する紙の厚さにあわせて調整してください。

 <おまけのひとこと>
 寒い季節になってきて、また庭に猫がひなたぼっこに来る季節になりました。うちは絶対餌はやらないと決めて、子供にも徹底していますが、積極的に追い払うこともしません。 昨日は、あまりみかけないちょっと小柄な猫が来ていました。写真を撮ったら目が合ってしまいました。当然警戒して行ってしまうだろうと思ったのですが、無視されました。あんまり人間を信用しないほうがいいぞ、と思います。

猫の写真

 昨日は秋のPTA作業で2時間堆肥運びをして筋肉痛です。今日は忙しいので、これから仕事です。




11月18日(月) フリーセル

 Windows に付属しているトランプ一人遊びのソフトウェアで「フリーセル」というものがあります。(ルールはご存知の方が多いと思うので説明しません。) Windows付属のフリーセルには「ゲーム番号の選択」という機能がついていて、同じ番号を入力すると同じ盤面が出来上がるようになっています。 (この、番号からカードの配列を計算するソースコードが、確かMicrosoft のサイトで公開されていて、以前ダウンロードしておいた記憶があるのですが見当たりません。何度かハードディスクの交換やパソコンの交換をしているうちに、紛失したようです。)

 従来から、フリーセルのソフトではゲーム番号は32000くらいまでの中から指定できました。(おそらく番号の表現に符号付16ビット整数を用いているためでしょうか。)この番号の指定のところに、-1-2を入れることができます。お手元にある方は試してみてください。すると、以下のような盤面が現れます。

#-1 #-2

 フリーセルのゲームをやっていると、かなり難しそうな配置でもできてしまうことが多いので、「どんなパターンでも完成させることができるのではないか?」という疑問を持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、この#-1#-2のパターンはそれに対する反例です。ご覧のとおりこれはできません。特に #-1 のほうなんて、手も足も出ません。

 ちなみに、Windows のフリーセルは成功率などの統計情報を持っていますが、この#-1、#-2 のパターンを選択しても、失敗としてカウントされることはないようです。 また、32000までの中で、唯一#11982だけは解けないそうです。(これは失敗としてカウントされます。)

 多くのトランプ一人遊びがそうであるように、この「フリーセル」というのもいろいろ別名があるようです。私が知っていたものは、ルールは同じでしたがカードのレイアウトも名前も違っていました。「フリーセル」の名前の由来であるいつでもどこにでも使えるカード置き場が4枚分ありますが、私が知っているルールでは「4枚まで手で持っていい」とされていました。この「フリーセル」の数が4枚というのが絶妙で、これを3枚に制限すると成功率はかなり下がってしまいますし、5枚にするとかなり易しくなります。 さらにバリエーションとしては、King が列の一番上に出てきたら、本来の8列に加えて1列だけ増やしてよい、というものもみたことがあります。

 なお、今使っているWindows XP に付属しているフリーセルでは、問題番号の入力の欄には 1-1000000 の間の数を入力せよ、と言ってきます。おそらく32000までは従来のバージョンと同じカード配列になっていると思います。

 <おまけのひとこと>
 ちょっと余談として書くつもりだったフリーセルの話が長くなったので、今日はこれだけです。トランプ一人遊びについても、いくつか書きたいものがあるのでいずれご紹介したいと思います。




11月19日(火) 自乗和

 ちょっと面白い数字の式の話をききました。

7+8+9=3+4+5+12
72+82+92=32+42+52+122

 3個の数字と4個の数字があって、それをそのまま足しても自乗して足しても等しくなる、というものです。これは一般式があって、こういったパターンはいくらでも作ることができます。さらに、これを図形で説明することができるそうです。

 <おまけのひとこと>
 今日は一日立ち仕事です。本日のページ更新時間は7分で、いつもの半分以下でした。(おそらく最短記録。)




11月20日(水) おもしろい等式

 昨日、そのまま足しても二乗して足しても等式が成立する数の組というのをご紹介したら、「こんなのもありますよ」と教えていただきました。

7+14+21=11+9+22
72+142+212=112+92+222

 昨日のものは数字4個と数字3個でしたが、これは3個ずつで成立しているところが美しいです。このパターンも一般式を教えていただきました。

 n乗して足したものに関する等式は、フェルマーの定理(フェルマー・ワイルズの定理、と呼ぶべきでしょうか)の魅力を見ればわかるように、とても面白いものです。たとえばこんな等式もあります。

14+24+94=34+74+84

 これも、登場する数字が全部一桁で成立していて、1から9の間の両側の1,2,3,7,8,9をうち、3と9を入れ替えた形になっていて、とても面白いです。

 <おまけのひとこと>
 昨日に続いて今日もとても忙しいです。上記の式も、今朝あわててメールに目を通しました。いろいろ連想が膨らんで、書きたいことがたくさんあるのですが、本に当たらないと自信がなくて、その本を探す時間がなくて、またの機会にしたいと思います。




11月21日(木) 数学的詭弁

 先日ご紹介した、半世紀昔の旧ソビエト連邦の小中学生向けの算数の問題集『数学玉手箱』に、数学的詭弁というセクションがあります。「詭弁とはわざと間違った推論で、正しそうに見えるものです」と説明されています。とりあえずご紹介しやすい例(図面とか分数式などが不要なもの)をいくつかご紹介しようと思います。

─その1─

5=6

35+10-45=42+12-54 共通因数をくくりだして
5(7+2-9)=6(7+2-9) 両辺を共通因数で割ると
5=6
どこがおかしい?

─その2─

4=8

方程式 2x+y=8 と x=2-(y/2) を連立させる。
これを代入法で解くと 2(2-(y/2))+y=8
従って 4-y+y=8,  yが消えるので
4=8
どこがおかしい?

─その3─

すべての数は互いに等しい

m≠n とする。
恒等式 m2-2mn+n2= n2-2mn+m2をとると
(m-n)2=(n-m)2 である。ということは
(m-n) = (n-m) だから、移項して m+m = n+n、すなわち 2m=2n,
従って m=n となる。
どこがおかしい?

─その4─

任意の数はその2倍と等しい

二つの等しい数 a と b をとる。 すなわち a=b である。
両辺にaを掛けて、b2を引くと a2-b2=ab-b2
因数分解すると (a+b)(a-b)=b(a-b) となる。
これより a+b=b 、すなわち a+a=a である。なぜなら a=b だからである。
つまり、 2a=a となって、任意の数はその2倍に等しくなった。
どこがおかしい?

─その5─

4=5

4÷4=5÷5 である。
この恒等式の各辺の共通な因数をくくりだすと
4(1÷1)=5(1÷1) である。
カッコの中の数は等しいから
4=5 である。
どこがおかしい?

 このあたりは有名で、典型的な誤りのパターンに過ぎないとご覧になる方もいらっしゃるかな、と思いますが、こんなパターンの問題が何十問も算数の問題集に並んでいるというところがすごいな、と感心します。たとえば、方程式と不等式、というセクションには、さりげなく

3x=2(x-3)+x+4 を解きなさい
3x=2(x-3)+x+6 を解きなさい

なんていうような問題が紛れ込んでいたりして、感心します。

 こういう「詭弁」というのも、パズルとして、トリックとしてとてもおもしろいと思います。

 <おまけのひとこと>
 しょうぎ作曲という、あたかも連歌のように音楽を作ってゆくという手法についてご紹介いただきました。 おそらく、カノン(輪唱)とかフーガとかいった音楽が生まれてきた形態というのは、これに近い状況だったのではないかと想像します。
 ラヴェルの「ボレロ」という曲があります。小太鼓の「タン タタタ タン タタタ タッタッ」というリズムに、いろいろな楽器が次々と加わってゆくとても不思議で楽しい音楽です。この曲は、ラヴェル自身がピアノ連弾版の楽譜を書いているのですが、内輪の集まりのときに、いろいろな楽器や音の出せるもの(何だって打楽器になります)を持ち寄って、ピアノを基本にして、いろいろな楽器が加わってゆくとにぎやかになって楽しいときいたことがあります。リズムさえだいたい合っていれば、どの高さで加わってもそれほど違和感がないそうです。楽しそうなので一度やってみたいと思っています。
 上記の「しょうぎ作曲」を読んで、そんなことを思い出しました。もちろん「しょうぎ作曲」というのは、もっとはるかに自由度の高い世界を考えているのでしょうけれども。おもしろい話をご紹介くださってありがとうございました。




11月22日(金) よこがお

 数学セミナーという雑誌に、寄稿された著者の近況などのコメントを載せたページがあります。そういう欄を読むのが好きなので、よく読んで楽しませていただいています。今月(2002年12月号)の「よこがお」欄のうち、ちょっと興味を惹かれたものを引用させていただきます。(敬称略)

松本幸夫(東京大学大学院数理科学研究科教授)
この間、夜中に眠れないとき、睡眠をいちばん妨げているのは「自分自身の意識」であると気がついて、「眠れない、ゆえに我在り」という警句を思いつきました。よけいに眠れなくなりました。
(数学セミナー2002年12月 通巻495号 p.50 より引用)

 あー、こういうのってわかる、と共感します。不眠症というのはご本人にとってはとても深刻な問題だと思います。確かに「眠らないと明日困る」という気持ちになるほど眠れないような気がします。私は、眠れないというのはそれだけ自分が自由に使える時間が増えるということだと思うことにしています。

橋本義武(大阪市立大学大学院理学研究科助教授)
今年の日本人ノーベル賞受賞者の二人の仕事を、某新聞の社説が「役に立つ科学・役に立たない科学」と色分けしていた。コンパスの脚のうち、円を描く方を「役に立つ脚」、動かない方を「役に立たない脚」と表現するようなものではないだろうか。
(数学セミナー2002年12月 通巻495号 p.50 より引用)

 この「コンパスの脚」の比喩がとても面白くて感心しました。 よく言われる話ですが、数学の中でも特に応用からは遠いと言われていた整数論が昨今の情報産業の暗号や認証などのセキュリティ関係でにわかに注目を集めたりするように、何がどう使われるかなんてわかりません。必死で応用を考えて作ったものより、ただ単に面白さを追求していって出てきた結果のほうがずっと役に立ったりするものです。やっぱり面白いと思えることをとことんやるのがいいですよね。 (…なんて贅沢は言ってはいられないのですが現実は。)

 ところで、「私の数学が応用の奴隷に成り下がるなんて耐えられない」といったようなことを言った数学者は誰でしたっけ? わりと最近の人だったように思うのですが。 …と思って検索してみたら、最近も最近、フェルマーの定理を証明したワイルズが、その定理は何かの役に立つのかと問われてこう答えたのだそうですね。

 <おまけのひとこと>
 先日、久々のリコーダーアンサンブルの練習で、3本(アルト、テナー、バス)でヘンデルの王宮の花火の音楽をやりました。この曲はヘンデルの晩年の傑作で、確か戦争が終わった祝賀の花火の音楽だったと思います。当時としては大々的な50人近い大編成の管楽器主体の華やかな曲です。これをたった3本の管でやったらいかにもさみしいのかな、と思ってやってみたところ、これがとても楽しい!のです。
 3本ですから本当に最低限の和声なのですが、それでも十分ヘンデルらしさが感じられて、大編成でやるのとはまた違った意味でいい曲だなあと改めて感激しました。どのパートもおそらくやっていて楽しいのですが、私は大好きな中声部をテナーで担当できて幸せでした。(中声というのは和声の性格音で、長調になるか短調になるかを決める音を出すところが好きです。)
 そんなわけでこのところ王宮の花火の音楽が頭の中で鳴っています。

 p.s. 最近、少しずつこのページの感想などをメールでいただけるようになってとても喜んでいます。基本的に、いただいたメールに本名と思われる名前が記載されている場合はこちらも漢字で自分の名前を書きますし、通称名と思われるもので感想などをいただいた場合は、hhaseでお返事を書かせていただいています。
 いただくメールのほとんどは漢字で書かれたフルネームでいただいているのですが、先日間違って通称名でいただいたメールに漢字の signature を付けてしまいました。失敗失敗。

 下の子が、「アンナ・カレーニナ」という本のタイトルを見て、「アンナ、カレー煮な」と言って喜んでいます。 小さいころって確かにこういうのが妙に可笑しかったものでした。




11月23日(土) ブリッジ

 コントラクトブリッジというトランプのゲームがあります。二人ずつのペアで戦う4人ゲームです。あまり有名ではないのは敷居が高いからかな、と想像しているのですが、パズルやゲームに興味のある方ならば、覚えておいて損はないと思います。

 カードゲームというのは、それはそれはたくさんの種類のものがありますが、その中でも「トリックテーキング」という分野のものが広いジャンルを持っています。「トリック」というのは、一人が1枚ずつ順番にカードを出していって、全員が出し終えたところで一番強いカードを出した人が勝つ、という動作の一区切りです。たとえば日本でも有名な「ナポレオン」というゲームがありますが、これもトリックテーキングゲームです。

 ブリッジというのは、52枚のカードを全部4人に配り、13回のトリックのうち何回勝つことができるかを競うゲームで、ゲームそのものはきわめて単純なものです。味方同士が向かい合って座りますので、両隣が敵(オポーネント)になります。自分がディクレアラー(親)になると、自分のパートナー(ダミーと言います)はカードを全部テーブルの上にさらして、自分が二人分のカードをプレイします。敵は、ダミーのカードを見ながら自分がどのカードを出すかを決めることができます。

 くわしいルールやその面白さを書き始めるときりがないので、紹介は専門のページ、たとえばこちらのかずちゃんのブリッジって何?─コントラクトブリッジ入門─などをご覧いただきたいと思います。こちらのサイトにはブリッジシミュレータというところがあって、これがパズルとしてとても面白いです。まずは初級用のアラカルトの[JAVA版]を起動して、遊んでみてください。最初は[ダブルダミー]、つまり敵のカードを全部見られる状態にしてプレイしてみると、感じがつかめると思います。

 将棋や囲碁のルールを知っていると、実際に人間と対戦する機会がなくても詰将棋や詰碁や棋譜や観戦記などで楽しめるように、ブリッジも問題集やパズルや解説などがたくさんあって、とても楽しめます。

 <おまけのひとこと>
 私は実際の大会に出場したことは1度しかありません。4人戦で、16チーム出場して、ビリでした(笑)。




11月24日(日) ダブルダミーの問題

 昨日、コントラクトブリッジの話をちょっとご紹介した時に、このゲームにも面白いパズルや問題がありますよ、という話をしました。今日はその一例をご紹介します。

 下の図は、「ダブルダミーの問題」と言って、4人全部の手が公開されています。今はゲームの途中の段階で、8回のトリックが終了したところです。残りはそれぞれ5枚ずつ持っています。自分は南(South)に座っていて、手持ちのカードはスペード(S)がジャック(J)1枚、ハート(H)は 8を1枚、ダイヤ(D)はエース(A)と7と3の3枚、クラブ(C)は1枚もありません。

With spades trumps S leads.
N & S must win THREE tricks against any defense.


          (North)
               S  --
               H Q7
               D J92
               C  --
(West)                (Eest)     
       S 3              S  --     
       H J              H K952    
       D K85           D Q       
       C  --             C  --     
              (South)
                 S J
                 H 8
                 D A73
                 C  --

 今、切り札はスペード(S)です。残り5回のトリックのうち、3回勝たなければいけません。ちょっと見ると、切り札のスペードのジャック(J)は確実に勝てますし、ダイヤ(D)のエース(A)も確実に勝てるでしょう。でも、East-West が最善を尽くしたとして、自分たち(North-South)が確実にもう1トリックとるためには、どのようにプレイしたらいいでしょう?

 南(South) に座っている人(自分)がこれから最初のカードを出します。何をどういう順番で出したら3トリック確実に取れるか、考えてください。

 この問題は、ずいぶん昔(確か10年くらい前)、NetNewsに投稿されていたものです。当時ブリッジのルールをやっと覚えたくらいの私は、「高々5枚ずつ、しかもリードされたカードのスーツ(マーク)をフォローしなければならないんだから、組み合わせなんて高々有限でしょ?」とたかをくくって考えたら、2時間かかっても解けなくて愕然としました。

 投稿者の方にメールで質問したら、大変丁寧なお返事をいただきました。あとで私のブリッジの先生(会社の同期で、学生時代はブリッジの強い某大学のブリッジ研究会の代表をやっていた人)に経緯を話したら、私の問い合わせた相手は日本でもトップレベルの有名人で、私はまるで将棋のプロの八段くらいの人に初心者っぽい詰将棋の質問をするようなまねをしたらしいということがわかって赤面しました。

 <おまけのひとこと>
 昨日、ロボットコンテストのテレビを子供たちと見ました。何ヶ月もかけて準備をしてきたロボットが、いざ本番というときに思ったように動かないというシーンに同情しました。先週、自分の仕事の結果を見てもらう機会があったのですが、それまでちゃんと動いていたものが、当日の朝、本番1時間前という段階で突然動かなくなって、机の下に潜り込んで機材を分解して調べたり、代替品の調達に駆け回ったり大騒ぎでした。




11月25日(月) ブリッジの問題:グランドスラム

 説明不足かなと思いつつ、ブリッジの話をもう一日だけしたいと思います。今日は有名な古典問題をご紹介します。

 ブリッジで、13回のトリック全てを自分のチームで取ることを「グランドスラム」と言います。今日の問題は、このグランドスラムを「ノートランプ」の条件で達成してくださいというものです。ノートランプというのは、切り札のないプレイで、毎回リードされるスーツ(マーク)のカードの最高位の札が勝つというものです。

7NT (South).
Opening lead is 'S5' by East. How do you play?

              (North)
               S:AKQ
               H:QJT
               D:8
               C:JT9832
  (West) opening               (East)   
   S:? --> S5                   S:?     
   H:?                          H:?     
   D:?                          D:?     
   C:?                          C:?     
                                     
              (South)
                 S:2
                 H:AK
                 D:A765432
                 C:AKQ

 さて、自分はSouthに座っています。めったにないすばらしい手で、ノートランプでグランドスラムを狙っています。ざっとみたところ、スペード(S)は A,K,Q 、ハート(H)も自分とパートナーとで A,K,Q,J,T (T=Ten で10のことです)、クラブ(C)ときたら A,K,Q,J,T,9,8 とまったく隙がありません。うまいこと自分(South)のダイヤモンド(D)の 7,6,5,4,3,2 を、パートナー(North)からリードした必勝カードの下に捨てられたら申し分ありません。

 最初は、自分の左手(West)からオープニングリードが始まります。仮にオープニングがダイアモンドであれば、自分(South)のダイヤのAで勝って、とりあえず自分(South)の側で勝てる、ハートのA,K と、クラブの A,K,Q, と勝って、スペードの2 をリードし、パートナー(North)で勝って、あとは残ったクラブで勝てば楽勝です。オープニングがハートでもクラブでも同じことです。

 ところが仮にオープニングリードがスペードの5だったとしましょう。こうなると必然的にNorthが勝ってしまいます。さてその後、Northからハートをリードしてもクラブをリードしても、必ずSouthで勝ってしまいます。そうなるともう二度とNorthで勝つことができないので、せっかくの長いクラブも宝の持ち腐れになって、Southからダイヤモンドをリードせざるを得なくなって、「グランドスラム失敗」になってしまいます。

 ところが、この手でオープニングリードにスペードを出されても、確実に13トリックを取るプレイの仕方があるのです。おわかりになるでしょうか?

 この問題、ブリッジの話をご紹介しようと思ったときに書こうと思っていたものなのですが、先日ご紹介したブリッジシミュレータというページの[初級:アラカルト]の中に、この問題が「有名問題1」として載っていました。(私の手元のメモとはスーツがちょっと違うくらいで全く一緒でした。)このブリッジシミュレータで実際にやってみることをお勧めします。

 <おまけのひとこと>
 この問題も思い出深いものです。とても秀逸なパズルだと思います。

 いつも持ち歩いているノートパソコンには、PCMCIAカードのスロットが1つついていて、カードをはずすと内側から簡単なふたが閉まるようにできています。半月ほど前、そのふたが折れてはずれてしまっているのをみつけました。残念に思いましたが仕方がありません。
 昨夜、いつものようにメモリカードにPCMCIAカードスロット用のアダプタを付けてカードスロットに差し込むと、珍しくカードを認識してくれませんでした。Windows98のころはよくそういうことがあったのですが、Windows 2000 になってからは珍しいな、と思ってもう一度抜いて挿しなおしました。いつもよりちょっときついような気がしますが、強めに押し込んだらカードは認識しました。でもドライブとして見えません。
 変だな、と思ってカードを抜いて、中をよく見てみると、なんとつる巻きバネがPCMCIAカードのコネクタのピンの間に押し込まれてしまっています。先日折れたカードスロットのふたを押さえていたバネが、いままでどこかに引っかかっていたのが外れたらしく、それに気がつかずにカードを押し込んでしまったようです。このバネがジャンパ(ピン同士を電気的につなぐ配線)として働いてしまって、動作しないようです。しかもピンは曲がってしまっています。
 これは「残念」では済まされません。無線LANカードも、シリアルインタフェースカード(これでいろいろな機材をつないで実験とかをします)も、メモリカードも使えないノートパソコンでは仕事になりません。昨夜気付いたのが遅かったので、今日これから分解して修理を試みます。やれやれ。




11月26日(火) 英語の回文

 前から読んでも後ろから読んでも同じになっている文を回文と言います。日本語だと、短いものだと

トマト
しんぶんし
たけやぶやけた

 なんていうのが有名です。以前も一度回文について書いたことがありますが、ここ数日書いていた、ブリッジの話の元になった問題のテキストを、昔のハードディスクのバックアップの中を探していたら、英語の回文に関するメモが出てきたので今日はそれをご紹介しようと思います。

A man, a plan, a canal; Panama?
人、計画、運河 ─ パナマ?

 これは有名な英語の回文です。名詞を並べただけじゃないか、という気もしますけれども、大変すっきりとまとまっていて、印象深いです。これが基本形で、これにいろいろ単語を追加してゆくパターンがあるようです。

A man, a plan, a cat, a canal; Panama?

 猫、が加わりました。

A man, a plan, a cat, a ham, a yak, a yam, a hat, a canal--Panama!

 手元のメモに残っていた、このパターンの最長のものは、Dan Hoey という方がコンピュータを使って作ったという次のようなものでした。

A man, a plan, a caret, a ban, a myriad, a sum, a lac, a liar, a hoop, a pint, a catalpa, a gas, an oil, a bird, a yell, a vat, a caw, a pax, a wag, a tax, a nay, a ram, a cap, a yam, a gay, a tsar, a wall, a car, a luger, a ward, a bin, a woman, a vassal, a wolf, a tuna, a nit, a pall, a fret, a watt, a bay, a daub, a tan, a cab, a datum, a gall, a hat, a fag, a zap, a say, a jaw, a lay, a wet, a gallop, a tug, a trot, a trap, a tram, a torr, a caper, a top, a tonk, a toll, a ball, a fair, a sax, a minim, a tenor, a bass, a passer, a capital, a rut, an amen, a ted, a cabal, a tang, a sun, an ass, a maw, a sag, a jam, a dam, a sub, a salt, an axon, a sail, an ad, a wadi, a radian, a room, a rood, a rip, a tad, a pariah, a revel, a reel, a reed, a pool, a plug, a pin, a peek, a parabola, a dog, a pat, a cud, a nu, a fan, a pal, a rum, a nod, an eta, a lag, an eel, a batik, a mug, a mot, a nap, a maxim, a mood, a leek, a grub, a gob, a gel, a drab, a citadel, a total, a cedar, a tap, a gag, a rat, a manor, a bar, a gal, a cola, a pap, a yaw, a tab, a raj, a gab, a nag, a pagan, a bag, a jar, a bat, a way, a papa, a local, a gar, a baron, a mat, a rag, a gap, a tar, a decal, a tot, a led, a tic, a bard, a leg, a bog, a burg, a keel, a doom, a mix, a map, an atom, a gum, a kit, a baleen, a gala, a ten, a don, a mural, a pan, a faun, a ducat, a pagoda, a lob, a rap, a keep, a nip, a gulp, a loop, a deer, a leer, a lever, a hair, a pad, a tapir, a door, a moor, an aid, a raid, a wad, an alias, an ox, an atlas, a bus, a madam, a jag, a saw, a mass, an anus, a gnat, a lab, a cadet, an em, a natural, a tip, a caress, a pass, a baronet, a minimax, a sari, a fall, a ballot, a knot, a pot, a rep, a carrot, a mart, a part, a tort, a gut, a poll, a gateway, a law, a jay, a sap, a zag, a fat, a hall, a gamut, a dab, a can, a tabu, a day, a batt, a waterfall, a patina, a nut, a flow, a lass, a van, a mow, a nib, a draw, a regular, a call, a war, a stay, a gam, a yap, a cam, a ray, an ax, a tag, a wax, a paw, a cat, a valley, a drib, a lion, a saga, a plat, a catnip, a pooh, a rail, a calamus, a dairyman, a bater, a canal--Panama.
Dan Hoey
Hoey@AIC.NRL.Navy.Mil

 冠詞も含めて540単語あるそうです。(知らない単語もいっぱい。) さて問題です。この540単語の回文の、ちょうど真ん中はどこでしょう?

 <おまけのひとこと>
 昨日お話した、ノートパソコンのPCカードスロットに詰まってしまったバネは、苦労の末取り出すことができました。結局ノートパソコンを分解して、やっととれました。今はPCカードスロットは無事使えています。
 IBMのThinkPadのX20というちょっと古い型のものを使っているのですが、これはちゃんとマニュアルに分解の仕方が図解されていて、メーカー標準品のminiPCIボードというものを交換するために、ユーザーがパソコンを分解することを許しています。分解するとメーカー保証を受けられなくなるというところがほとんどだと思うのですが、ちゃんと分解させてくれるところがありがたいです。




11月27日(水) 回文和歌

 昨日、英語の回文を紹介しました。英語の回文というのもたくさんのものが知られているのですが、今日は日本語の、和歌の回文をご紹介します。これも有名なのでご存知の方もいらっしゃるでしょう。

むらくさにくさのなはもしそなはらばなぞしもはなのさくにさくらむ
群草に草の名はもし備はらばなぞしも花の咲くに咲くらむ

をしめどもついにいつもとゆくはるはくゆともついにいつもとめじを
惜しめども遂にいつもと逝く春は悔ゆとも遂にいつも止めじを

 いずれも、内容的にも和歌としてちゃんと成立していて、なおかつ言葉遊びの技巧の巧みさがあって、とても味わい深いすばらしい作品だと思います。(どうしても同じ言い回しが出てきて、ちょっとくどいですけれども。) 一首目の“むらくさ”“咲くらむ”の対応や、二首目の“〜も遂にいつも”という単独の対称形が対称的な位置に配置されていたり、“逝く”“悔ゆ”との対応など、たいへん面白いです。

 <おまけのひとこと>
 昨日のひとことでご紹介した長い回文(palindrome)ですが、元はこちらのThe Panama Connection(from Dan Hoey)というページにあるのを見つけました。(このページの末尾のコメントを見て、とりあえず昨日のページに作者名とメールアドレスを書き加えました。)

 さらに探してゆくと、このパナマ運河のパターンのもっともっと長いものとして、World's Longest Palindrome? 15139 wordsというページがありました。タイトルの通り、1万5千語を越える長大な作品で、解説と、作品の全文が紹介されているページです。ここまで来ると人名とかも多くて、対称性を確かめるどころかどんな単語が出ているのかな…と眺めることすら大変です。 この長い回文の中央はここだよ、とマークしてくれてあります。

 そういえば、昨日の英語の長い回文の中央は、pagan(異教徒)という単語の先頭の'p'の文字でした。




11月28日(木) シチャーマンのダイス

 サイコロ(ダイス : dice)というのはゲームや賭博で大変重要な役割を果たしています。この「偶然を作り出す装置」というのは、誰が発明したかわからないほど古くから存在するそうです。今日から何回か、このサイコロに関係する話題を取り上げようと思います。

 サイコロというと、普通は立方体で、各面には1から6までを表す窪みが彫られているものをイメージされると思います。これを2個一緒に振ると、出た目の合計は

 2 : 1通り 1-1
 3 : 2通り 1-2,2-1
 4 : 3通り 1-3,2-2,3-1
 5 : 4通り 1-4,2-3,3-2,4-1
 6 : 5通り 1-5,2-4,3-3,4-2,5-1
 7 : 6通り 1-6,2-5,3-4,4-3,5-2,6-1
 8 : 5通り 2-6,3-5,4-4,5-3,6-2
 9 : 4通り 3-6,4-5,5-4,6-3
10 : 3通り 4-6,5-5,6-4
11 : 2通り 5-6,6-5
12 : 1通り 6-6

というように、2から12までの数が、1,2,3,4,5,6,5,4,3,2,1通り出てきます。 “シチャーマンのダイス”というのは、2個の立方体のサイコロの数字のパターンを変えても、2つのサイコロの目の合計が、普通のサイコロ2個と同じ分布になるもので、

サイコロ1: 1, 2, 2, 3, 3, 4
サイコロ2: 1, 3, 4, 5, 6, 8

となっているものを言います。たとえば、サイコロ1の全部の目から1を引いて、サイコロ2の全部の目に2を足したもの、[0,1,1,2,2,3][2,4,5,6,7,9] であっても同じ分布になりますが、これは上記のシチャーマンのダイスと同じ解であるとみなすと、このような分布になる2つの立方体のサイコロというのは、通常のものとシチャーマンダイスと、2通りだけであることが証明されているそうです。

 さて、ここでもう少し条件をゆるめてみて、以下のようなサイコロを1つ考えました。仮にサイコロHとします。

サイコロH: 1, 3, 5, 9, 11, 13

 このサイコロは、通常の色で塗られた1,3,5の面と、色違いの9,11,13の面をもっています。新しいルールは、2つのサイコロの面の色が同じならば足し算し、色が違っていたら引き算するということにします。

 このサイコロH[1,3,5,9,11,13]と、普通のサイコロ[1,2,3,4,5,6]を一緒に振って、上記のルールに従って出た目の和(もしくは差)を調べて見ると、これは普通のサイコロ2つと同様な分布になることがわかります。また、このサイコロHは、シチャーマンのサイコロ1[1,2,2,3,3,4]と一緒に振っても、やはり同じ分布になります。

 さらにこのサイコロHは、たとえば[1,2,2,3,4,5]とか[1,4,5,5,6,6]なんていう変なサイコロと一緒に振っても、やっぱり同じ分布になるのです。なぜだかおわかりになりますか?(普通のサイコロとの6×6の組み合わせを書いて見れば、すぐわかると思います。)

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 最初は、サイコロH[1,3,5,-9,-11,-13]という面をもっているものとして、足し算した答えの絶対値をとる、というルールを考えていたのですが、色違いだったら引き算、というほうがわかりやすいかなと思って表現を変えました。

 シチャーマンのダイス、というのは昔のメモからひっぱってきたものです。webで検索をかけてみたのですが、ほとんど情報がありません。昔の「数学セミナー」誌の「エレガントな解答を求む」で出題されたことがあるようなのですが、それ以上の情報がありません。そもそも“シチャーマン”の綴りもわからないのです。何かご存知の方がいらしたら、教えていただけるとうれしいです。




11月29日(金) 和の分布の同じダイスの組の話(その1)

 昨日、出目の和が普通のサイコロ2つを振ったときと同じ分布になる、シチャーマンのダイスというものをご紹介しました。こうなると当然気になるのは、サイコロの数が3個、4個、と増えていったらどうなんだろう? ということと、六面体ではない(面の数が6以外の)サイコロ2個だったらどうなるんだろう? ということです。

 とりあえず後者の、面の数が6面ではないサイコロ2個のほうが考えやすそうだったので、まずは正四面体のサイコロ2個の場合と正八面体のサイコロ2個の場合について考えてみました。

 まずは正四面体ですが、普通のサイコロは[1,2,3,4]であるとします。これに対して、シチャーマンのサイコロのように、2つ足すと普通の4面サイコロ2個の和と同じ分布になるものを探して見ると、こんなものがみつかりました。

4面サイコロ1: 1, 2, 2, 3
4面サイコロ2: 1, 3, 3, 5

 これは次のようにして見つけました。まず、通常の4面サイコロ[1,2,3,4]2個の和のマトリクスを書きます。この4×4の領域を4つに分けることを考えます。とりあえず下の図の左側のように4つに分けて並べなおして見ると、右側のようになります。これで[1,2,2,3][1,3,3,5]という2つの4面サイコロが得られます。もちろんでたらめに4つにわけたのではうまくいきません。

すみません、htmlを書くのが面倒だったので図で貼り付けてしまいました。

 このような発見的な手法によって、八面体サイコロの例も2つほど見つけました。

8面サイコロA1: 1, 2, 2, 3, 3, 4, 4, 5
8面サイコロA2: 1, 3, 5, 5, 7, 7, 9,11

8面サイコロB1: 1, 2, 3, 3, 4, 4, 5, 6
8面サイコロB2: 1, 2, 5, 5, 6, 6, 9,10

 なんとなくパターンや対称性が見えてきます。ちょっと研究してみると、たとえば9面のシチャーマン・ダイスのペアは少なくとも1組、12面なら少なくとも2組、30面ならば少なくとも3組はあるはずだ、ということがわかってきました。今のところの予想では、9面は1組、12面は3組、30面も3組、かなあと思っています。(12面は普通に考えると2組なんですが、8面が1組ではなく2組あるのと同じ理由で、3組はあることがわかっています。) また、面の数が素数の場合はシチャーマンダイスは存在しないのではないかと今のところは思っています。

 このあたりの話を、この週末に書けたら書きたいと思っています。(合成数ならばシチャーマン・ダイスが存在する、というのは今日の図をご覧いただけばわかると思います。ヒントは「合同な領域の平行移動」です。)

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 4面や8面のサイコロにも、昨日のサイコロHに相当するものがあります。4面なら1つ、8面なら2つみつかりました。普通のシチャーマンダイスの数と同じだけサイコロHも存在するような気がしますが、まだよくわかりません。




11月30日(土) 和の分布の同じダイスの組の話(その2)

 出目の和が普通のサイコロ2つを振ったときと同じ分布になるようなサイコロの話の続きです。それが正式な名称なのかわからないのですが、六面体の例に倣って「シチャーマン・ダイス」と呼ぶことにします。今日は、面の数が素数ではないときにシチャーマン・ダイスが存在することと、その作り方を12面ダイスを例にご説明しようと思います。(昨日の「ヒント」で、もうお気づきの方もいらっしゃるとは思いますが。)

図 1 図 2

 まず、図1のように12面ダイスを2個振ったときに、その目の和がどうなるかという12×12のマトリクスを書きます。このマトリクスのどこかのマスに注目してみると、その上と左はかならず1小さく、右と下はかならず1大きくなっていることがわかります。 図2は、この12×12を、1×12の細長い長方形12個に分けてみたものです。この長方形を見ると、12個の数字が順番に1つずつ増えていっているのがわかります。(あたりまえですね。)

 では続いて、違う分け方を考えて見ましょう。図3, 図4をご覧ください。

図 3 図 4

 図3は 2×6 の長方形12枚に分けてみたもの、図4は3×4の長方形12枚に分けてみたものです。ここで、一番左上の、数字が最も小さい長方形にご注目ください。この長方形を構成する12個の数字すべてに同じ数字を足せば、他の11個の長方形を作れるようになっています。これは、もともとの12×12のマトリクスが、同じように左上から右下に向かって階段のように増加しているためです。

 ということで、この図3と図4から、12面のシチャーマン・ダイスが簡単にみつけられます。図3の例で説明します。

 まず、左上の数字が最小の長方形に注目すると、構成する数字は

[2, 3, 3, 4, 4, 5, 5, 6, 6, 7, 7, 8]

となっています。これがまず1つのダイスのパターンになります。相手のダイスの最小の数字が1だとして、全ての数字を1ずつ小さくすれば

[1, 2, 2, 3, 3, 4, 4, 5, 5, 6, 6, 7]

となります。このダイスの相手のダイスは、図3の12個の長方形それぞれの、左肩の一番小さな数字に注目して、その数字がダイス1の最小の数字である1と足されたときに出現するようにすればよいので、

上の段:1, 3, 5, 7, 9,11
下の段:7, 9,11,13,15,17

となります。整理すると

12面ダイスA1 : 1, 2, 2, 3, 3, 4, 4, 5, 5, 6, 6, 7
12面ダイスA2 : 1, 3, 5, 7, 7, 9, 9,11,11,13,15,17

となります。同様に、図4からは

12面ダイスB1 : 1, 2, 2, 3, 3, 3, 4, 4, 4, 5, 5, 6
12面ダイスB2 : 1, 4, 5, 7, 8, 9,10,11,12,14,15,18

が得られます。というわけで、9面ダイスならば3×3に相当する解が、30面ダイスならば2×15、3×10、5×6に相当する解がそれぞれある、というわけです。

 これで話が終わりであれば単純だったのですが…

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 これから後の話は場合分けが煩雑になっていって、まだ追い切れていません。すっきりした結論にはならなそうなので、途中でやめることになりそうです。



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