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以前の「ひとこと」 : 2002年8月前半




8月1日(木) 平面多角形リングモデル:菱形十二面体

 平面多角形の輪っかを組み合わせて作る立体モデルの2回目です。今日は菱形十二面体です。最初に写真を見ていただきましょう。

菱形十二面体(1) 菱形十二面体(2) 菱形十二面体(3)
写真 1 写真 2 写真 3

 この場合は稜だけを辿っても平面にならないので、菱形の短い方の対角線を通るようにしています。ちょうど先日ご紹介したこの形です(7月20日ひとこと参照)。 このモデルは、ちょっとつぶれた六角形を6個組み合わせて作ってあります。

菱形十二面体




写真1の菱形十二面体の稜の部分をなぞってみました。
菱形十二面体 菱形十二面体




 さて、このモデルは菱形十二面体の次数3の頂点のところで、3本のリングが交わっています。この部分は下の図のように、外側のパーツ(黄色)、中間のパーツ(水色)、内側のパーツ(ピンク)をそれぞれ3分の2ずつ切りとって組み合わせます。

3本を組む
3本のリングを切り欠きを入れて組む方法

 たくさんのリングを同じ場所で交差させようとすると、それだけ切り欠きの量が増えてしまうため、強度が低下してしまいます。とりあえず3交差までのモデルを作っています。

 <おまけのひとこと>
 私の出身の地方は、毎年8月1日にお墓参りとお墓掃除をする風習があります。なんでも200年くらい前、江戸時代に台風による大規模な水害があり、大変な被害があったのだそうで、その供養としてはじまったのものがそのまま定着したのだそうです。これから朝飯前にひとっ走り、片道50キロの峠道をドライブしてお参りに行ってきます。





8月2日(金) 平面多角形リングモデル:斜方20・12面体

 平面多角形の輪っかを組み合わせて作る立体モデルの3回目は、斜方20・12面体を作ってみました。先日20・12面体で作図した正10角形の切り欠きの方向を変えて、数も12枚で作ります。20・12面体の20枚の正三角形と12枚の正5角形の辺のあいだに、それぞれ正方形を入れた立体です。

斜方20・12面体 斜方20・12面体
斜方20・12面体 稜をなぞった

 作ってみると、なんだか正方形が細長く見えます。これは目の錯視現象、いわゆる錯覚です。組んでいる輪っかは正10角形で間違い無いので、右の図のように稜線をなぞってみると、ちゃんと正方形であることがわかります。ちなみに下の写真は、以前(今年の5月中旬ころ)ご紹介したビーズで作った同じ立体です。

ビーズによる斜方20・12面体
斜方20・12面体(ビーズ) 斜方20・12面体(ビーズ)

 この模型も、見る方向をいろいろ変えてみました。5角形、正方形、三角形によって構成されているので、それぞれの面を底にしておいてみて、真上から眺めてみました。これもとても美しい立体だと思います。

見る方向を変えてみる
斜方20・12面体 斜方20・12面体 斜方20・12面体
5角形の面 三角形の面 正方形の面

 <おまけのひとこと>
 職場でメインに使っているノートパソコンのハードディスクが手狭になったので、昨日載せ換えました。PCMCIAカード経由でCD-ROMを認識できるboot floppyを作るのが大変でした。意外と苦労したのが Adobe Acrobat 4.0 のインストールでした。(予算等の関係でいまだに4.0を使っています。)Windows 2000 用の PostScript のドライバがないとインストールできないと言われ、Adobe のホームページから Windows 用の汎用PostScriptドライバをダウンロードしてインストールし、Acrobatを再インストールしたらうまくいったかに見えたのですが、Distiller がうまく動きません。結局、ダミーのポストスクリプトプリンタをインストールする事によって Windows 2000 の標準 PostScriptドライバをむりやり入れて(EPSONの LP-9200PS3 を選びました)、Acrobat を再インストールしたらやっと使えるようになりました。おかげで2時間も無駄に悩んでしまいました。





8月3日(土) 正方形による分割問題
別冊「数理科学」パズルI 1976年11月

 今日は平面多角形リングモデルのご紹介をちょっとお休みして、有名なパズルの話を1つご紹介しようと思ったら、ちょっと長くなったので久々にあそびのコラムに入れました。新作正方形による分割です。

 正方形分割に関してはいろいろなページで紹介されていますが、あまり見かけない考察をしている論文を昔の雑誌でみつけたので、ご紹介しようと思いました。最初はここ「ひとこと」に書いてしまおうと思ったのですが、せっかく単発の話題ですし、たまには別のコーナーに書いてもいいかなと思ってちょっと時間をかけて「あそびのコラム」に入れることにしました。

 ちなみに参考文献は別冊「数理科学」パズルI(1976年11月)に載っていた 『長方形の正方形による分割』(大附辰夫) という論文です。1976年ですのでさすがに発行時にリアルタイムに購入したわけではなく、ずっと後で大学に入ってから買ったのだと思います。

 この論文のほかにもいろいろ面白い論文があって、とても楽しめました。こちらに著者とタイトル一覧が紹介されています。このシリーズ、私はIしか持っていないのが残念です。

 <おまけのひとこと>
 最近暑くて、ノートパソコンがしょっちゅう熱暴走します(廃熱の設計が悪いらしい)。確かに触ってみるとパソコンの底の部分がものすごく熱くなっています。これでは使い勝手も悪いし、パソコン自身の寿命にもよくないだろうと思って、昨日からクーラーボックス用の保冷剤をタオルで巻いて、その上に乗せて使ってみています。特に冷たすぎて結露するといったこともなく、極めて快適な温度になり、非常に調子がよくなりました。





8月4日(日) 平面多角形リングモデル:斜方立方八面体

 一昨日は斜方20・12面体をご覧いただきましたが、同じ原理で立方体-正八面体から作られる斜方立方八面体をご紹介します。これは正八角形のリング6枚から出来ています。2枚ずつがペアになって、直交する3面方向になります。

 このシリーズのモデルはリングの幅が狭い方がきれいかなと思って、今回は思いきり細くしてみました。でもこれはちょっとやりすぎでした。 ただ、これでも紙の強度としてはこの構造ならば十分で、ゆがんだりたわんだりすることはありません。また組む時にひずませる量が少なくて済むので仕上がりはきれいです。

斜方立方八面体(1) 斜方立方八面体(2) 斜方立方八面体(3)
写真 1 写真 2 写真 3

 写真1はもともとの立方体の面に由来する正方形(三角形と頂点を共有する正方形)を底にしてみたもの、写真2はもともとの立方体の稜に由来する正方形(三角形と稜を共有する正方形)を底にしてみたもの、写真3は三角形の面を底にしてみたものです。

 <おまけのひとこと>
 昨日、ノートパソコンが熱暴走して困るという話をここに書いたら、厚さ2mmのアルミ板を加工してノートパソコン用の放熱器を自作したというメールをいただきました。そういう工作をする能力が私にはないので、そもそも自作しようなんていう発想は出てきません。とても感心しました。 製品としては例えばこんなものがあるようです。 よく底にファンがたくさん組み込まれたものがありますが、これはファンの無いタイプで静かそうでいいです。 (でも自宅で使う分にはクーラーボックス用アイスパックでいいです。)





8月5日(月) 平面多角形リングモデル:正四面体

 普通ですと多面体のモデルをご紹介するような場合は、最初に一番簡単な正四面体が出てくることが多いと思います。が、今回の平面多角形リングモデルの場合は、一番簡単なのが正八面体(正方形3枚)、続いて立方八面体(正6角形4枚)…となって、正四面体は稜だけのモデルとしてはうまく作れません。

 そこで、1つの稜と、各面をすぱっと2等分する直線2本による二等辺三角形を考えて、それを6枚組み合わせて正四面体を作ってみました。4つの頂点と、4つの面の中心で3つのリングが交差し、6つの稜の中点で2つのリングが交差します。ちょうど、8月1日にご紹介した菱形十二面体のモデルと同じ構造になっています。

正四面体(1) 正四面体(2) 正四面体(3)
写真 1 写真 2 写真 3

 写真1が一般的な視点から見てみたもの、写真2は1つの稜から反対側の稜の方向を見たもの、写真3は頂点からまっすぐ底面を見下ろしたものです。写真2では2つのリング(三角形)がちょうど視線と平行になっており、残った4つの三角形が互いに組み合わさって四角形の中に星型の模様を作っているのが見えます。この方向から見るのが気に入っています。

 6月、7月とこのページのカウンタが妙に増えて驚いていたのですが、今月はまた以前のペースに戻っているみたいです。夏休みのせいなのか、それとも単に先月が異常だったのか…。 だから、というわけではないんですけれども、久々にGoogleで自分のページの関係しそうなキーワードで検索をかけてみました。

  • Googleのイメージ検索で「菱形十二面体」を検索
  • Googleのイメージ検索で「錐体鏡」を検索
  • Googleで「キッコーパズル」を検索
  • Googleで「ビーズ多面体」を検索
  • Googleで「稜モデル」を検索
  • Googleで「凧型六十面体」を検索

  •  「菱形十二面体」でイメージ検索をかけると、なんとこの「あそびをせんとや」しか出てきません。そんなばかなと思って「菱形12面体」でイメージ検索するともう少し増えます。(そのかわりこのページの画像は出てこなくなりました。) 「錐体鏡」でイメージ検索すると、最初に出てくるのが以前もご紹介したH.Hamanaka's Home Pageで、あとは数学展と、ここ「あそびをせんとや」の画像の3つでした。 このあたりまでは嬉しい話です。

     続いて通常のWeb検索で、「キッコーパズル」「ビーズ多面体」「稜モデル」「凧型六十面体」などを検索すると、やはりここしか出てきません。まあよそにはない情報を提供しているということではあるんですが、こんなキーワードで検索をかける人はまずいないだろうな…。

     <おまけのひとこと>
     今日は下の子の誕生日です。5歳になりました。本人いわく「最近、世の中では5歳になる人が多いねえ。○○君も△△ちゃんもみんな5歳になるんだよ。流行ってるのかな。」 …当たり前です。みんな同じ保育園の年中さんなんだから。





    8月6日(火) 平面多角形リングモデル:立方体

     昨日の正四面体に続いて立方体を作ってみました。同じく6つのリングで、うち4箇所が3本が交差、2箇所が2本が交差します。1つのパーツはいわゆるシルバー矩形、1:√2の長方形で、身の回りによくある比率のものです。

    立方体(1) 立方体(2) 立方体(3)
    写真 1 写真 2 写真 3

     写真1が一般的な視点から見てみたもの、写真2は立方体の対角線方向から見たもの、写真3は1つの面から見たものです。設計が悪くて若干寸法が狂ったため、立方体の稜の一部がひずんでいます。写真2では正三角形が2つ見えています。

     <おまけのひとこと>
     子供の誕生日プレゼントは、プラレールヘンリーと直線坂レールと曲線坂レールにしました。これまでは積み木などを橋桁にしてむりやり段差を作っていたらしいのですが、これだとどうしても線路が折れ曲がってそこで機関車がひっかかったりします。これでゴードンの丘も作れる、と本人は喜んでいます。





    8月7日(水) 平面多角形リングモデル:切頂八面体

     今日は切頂八面体をご紹介します。この立体は、もともとの正八面体の面に由来する正6角形8枚と、頂点に由来する正方形6枚からできています。このモデルでは、正方形のほうは4辺がちゃんとありますが、六角形のほうは対角線3本のみで、六角形同士の間の稜がありません。正3角形の各辺を4等分して、3つの頂点部分の小さな三角形を切り落とした形の六角形のパーツを使います。

    切頂八面体 切頂八面体:稜をなぞった
    写真1:切頂八面体 稜をなぞった

     写真1が一般的な視点からみたところです。これだとどこが切頂八面体なのかわかりにくいかもしれないので、例によって説明の図を作ってみました。

    切頂八面体:正方形の面 切頂八面体:六角形の面 切頂八面体
    写真 2 写真 3 写真 4

     写真2は正方形の面からまっすぐに見たところ、写真3は6角形の面から見たところ、写真4は2つの6角形の間の稜の方向から見たものです。 見る方向によって、これが同じ立体とは思えないほど印象が変わると思います。

    3つのリングの交差部分

     写真2の中央、六角形の中心のところで3つのリングが交差していますが、それぞれのパーツが傾いて交わるため、小さな三角錐ができるようなかたちになります。3つのパーツの切り欠きの入れ方は、上の図のようになります。

     <おまけのひとこと>
     今朝は寒いです。そろそろ立秋ですね。二十四節季に関しては、こんなページがありました。真夏日が平年では7月に3日、8月に4.5日ってそれホントでしょうか? そういえば数日前、「東京は5年後に夏の最高気温が40℃になる」という予測があったそうです。エアコンや交通機関や自動販売機等からの発熱は増加しつづけており、現在までの発熱量が今後も同様に推移するとそうなるんだそうです。





    8月8日(木) 平面多角形リングモデル:切頂四面体

     平面多角形リングモデルの最終回として、切頂四面体をご紹介します。1:2の長方形6枚で組むやり方と、正三角形4枚で組むやり方を考えたのですが、これは正三角形のパーツ4枚のものです。

    切頂四面体 切頂四面体:稜をなぞった
    写真1:切頂四面体 稜をなぞった

     写真1が一般的な視点からみたところです。このモデルは上の右の図のように、切頂四面体の全ての頂点を三角形4枚の頂点として表現していますが、切頂四面体の稜を1つも持たないため、立体模型というよりは三角形4枚のオブジェのように見えます。

    切頂四面体:上から見た 切頂四面体:横から見た
    写真 2 写真 3

     写真2,3は、それぞれ特別な方向からこのモデルを見たものです。写真2は1つの正三角形が完全に見える方向、写真3は4枚の正三角形が同じ形に見える角度から見ています。

    CGによる同じモデル

     このコンピュータグラフィックスは、本日ご覧頂いているモデルを棒で表現してみたものです。4つの三角形がどのように絡み合っているか、ご覧頂けますでしょうか。 なお、下にできた影をご覧下さい。これがちょうど写真3と同じ形になっています。つまり写真3はこの図の真上の方向から見ているということです。

     今回の正三角形4枚は、それぞれの辺の中心で他の三角形と交差していますが、この交差の位置を頂点の近くまで移動すると、このモデルは正四面体の各面を平面多角形リングで構成したモデルになります。このアイディアで1つ2つ模型を試作してみているのですが、いまひとつ美しくありません。 この「平面多角形リングによる面モデル」、また機会を見てご紹介しようと思います。

     <おまけのひとこと>
     ここ数ヶ月ほど、このページは多面体の話題ばかりになっていますが、今現在ご紹介したいと思っている話題のストックも7割程度は多面体関係です。明日からはちょっと別の話題をご紹介しようと思います。





    8月9日(金) Music Macro Language で遊ぶ

     久々に音の関係のお話をしようと思います。 私がパソコンで音を鳴らしてみたり楽譜を作るためのMIDIデータを作るときには、MML2MIDというツールを使わせて頂いています。 久々にこれを使って、ちょっと遊んでみました。

     ピアノをちょっと習った事のある方ならば、こんな指の練習をされたことがあると思います。練習曲1基本形(2kbyte:25秒)。

    指の練習
    譜例1:基本形

     ピアノを練習するときは、まず指がなめらかにまわるように、音の粒が揃うように、意図した通りに音楽が表現できるように、こういった基本形を様々に変形した練習をします。たったこれだけのパターンでも、アクセントやスタッカート、テヌートなどの表現をつけると、曲の印象が変わります。(今日のひとことの最後に、これらの書き方をちょっと解説してみました。興味のある方はご覧下さい。)

  • 例2:先頭にアクセントをつけてみたetude1a.mid(2kbyte:23秒)
  • 例3:最後の拍にアクセントを置いたetude1a2.mid(2kbyte:24秒)
  •  さらにここから様々にリズムを変形して行きます。

  • 例4:3連符にしてみたetude1b.mid(2kbyte:24秒)
  • 例5:左右を交互に鳴らすリズムetude1b2.mid(2kbyte:24秒)
  • 3連符
    例5

     こんな無味乾燥な練習曲でも、こうやってリズムをいじったり変なアクセントをつけたりすると、なんだか純粋に身体を動かす面白さというか、肉体的な快感とでもいうかを感じます。あ、もちろん自分でピアノを弾いて遊ぶ場合です。小学校の音楽の時間とかに、先生の弾くピアノの曲で、ちょっとリズムやテンポをいじっただけで、ものすごく可笑しくてみんなで大笑いしたりしませんでしたか? あんな「楽しさ」です。

  • 例6:さらにリズムをいじるetude1c.mid(2kbyte:20秒)
  • 例7:左手だけは基本形のままetude1c2.mid(2kbyte:24秒)
  • 例8:右手だけ2倍にetude1c3.mid(2kbyte:20秒)
  • 右手倍速
    例8

     「聴いて感動する音楽」というのとはまったく別の方向性として、体操のように身体を動かして楽しむ感覚です。明日は、おなじ音形でさらに「変な」リズムのものをいくつかご紹介しようと思います。

     以下、MMLの説明です。興味のない方は飛ばしてください。

     MMLでアクセントをつける(その音符の音量を一時的に変える)には、Eコマンドというのを使います。また、スタッカートのように楽譜に記述されている音符の長さよりも短く鳴らしたい場合は、qコマンドというのを使います。例えば上の本文中の例の2で、

    ドーミッファッソッ ラーソッファッミッ …

     というのがありますが、これを MML で書くと

    A l8 q4 E100 c E80 q18 efg q4 a q18 gfe

     となります。赤文字でEコマンド、青文字でqコマンドを書いていますが、もしこれらが無ければ

    A cefg agfe

    となって、基本形の譜例1の楽譜通りの何の表情も無い演奏になります。Eコマンドは音量を表します。つまり先頭のc(ド)の音は音量100で、それ以降は音量80で鳴らせ、という意味です。またqコマンドというのは、音符の最後からどれだけ空白にするかという数値を表します。ここで、MML2MID では4分音符の長さを内部では48と決めています。従って8分音符の長さは半分の24です。たとえばq18というのは、この8分音符24の長さのうち、後半のどれだけを音を出さないかを決める数字です。今、8分音符のefg(ミッファッソッ)の部分はq18ですから、長さ24のうち最初の6だけの時間は音を鳴らし、残りの18の時間は休むという指示になります。これでスタッカートらしく聞こえます。逆にq0とするとその音符のぎりぎりまで音を伸ばすことになります。

     qコマンドもEコマンドも、一度指定するとそれ以降ずっとその数字が有効になります。なお、qコマンドやEコマンドを使う場合は、一番最初の音を鳴らす前に、最初の値を設定しておいた方がいいでしょう。

     <おまけのひとこと>
     「あそびのコラム」に入れたほうがよかったくらい長くなってしまいました。トップページが重くてすみません。なお、今日ご紹介したmidiデータを生成したMMLのテキストファイルが欲しい方がいらしたら(いないでしょうけれども)ご連絡いただければ差し上げます。 この曲はさすがに著作権侵害とかいわれないだろうと思っています。

     そうそうもう1点、昨日分室の方に画像を1つ載せました。(分室へのリンクは、このページの一番下のあたりにあります)





    8月10日(土) Music Macro Language で遊ぶ(その2)

     昨日に続いて、さらに基本形(MIDI)を変形してみます。まず、こんなリズムにしてみました。

  • 例9:etude1d.mid(2kbyte:25秒)。

    リズムを変形
    例9

     さらにリズムをいじります。

  • 例10:Jazzっぽいリズム(その1)etude1g.mid(2kbyte:30秒)
  • 例11:Jazzっぽいリズム(その2)etude1h.mid(2kbyte:29秒)
  • 例12:左右を変えてみるetude1h2.mid(2kbyte:30秒)
  •  例10、11、12がどんなリズムなのかわかりますか? 真似をしたりリズム譜を書いてみたりすると面白いです。

     こうやって、同じ音型でもリズムをいろいろ変えて遊んでいると、あっという間に1時間ぐらい経ってしまいます。

     <おまけのひとこと>
     昨日は出張で埼玉県に行きました。暑いことは覚悟して行ったのですが、参りました、寒くて。行きと帰りに特急列車にそれぞれ2時間乗ったのですが、どちらも運悪くエアコンの風が直撃する席で、上着を着てカバンを抱えて縮こまっていましたが、列車を降りるときにはすっかり身体が冷え切って頭痛と吐き気がしました。 通りかかった車掌さんにも相談してみたのですが、他の席は暑いという人もおり、風量や風向きをコントロールできないので申し訳ありませんとのこと。お盆前の混雑した時期で、他の席に移るというわけにもいきません。

     目的地ではちょうど午後2時くらいの一番暑い時間に埼玉県内を歩いていたのですが、気温は37度とかで体温より高いくらいでしたが、あまりに身体が冷えていて、「あったかくていいな」と思ったくらいでした。帰りは夜遅く自宅の最寄駅に着いて、こちらは外へ出てもそれほど気温が高くないので、家に帰って熱い風呂に入ってようやく人心地つきました。

     自宅ではクーラーどころか扇風機もない生活をしているせいか、なんだかすっかりエアコンに弱くなってしまいました。職場にはエアコンはあります。これでも職場ではエアコンに強い方で、エアコン好きなんですが。 今週はお盆休みの調整で、今日は土曜日ですが仕事です。





    8月11日(日) 5拍子

     ピアノの指慣らしの練習のリズムパターンをいろいろいじってみるシリーズの3回目として、さらに基本形(MIDI)を変形してみます。今日は5拍子に挑戦です。

  • 例10:etude1i2.mid(2kbyte:24秒)。
  • 音符8個で5拍子に
    例10のパターンの模式図

     基本形では8つの音符で4分の4拍子1小節になっているので、8分音符が8個できれいに揃っていました。音符の数を変えないで5拍子にするのですが、一拍分、どこかで音符の長さを長くしてやる必要があります。とりあえず8個の8分音符の中のどれか2個を4分音符に換えてやれば、全体で5拍分になります。最初の例では2番目と7番目の音符を延ばす、シンコペーションのリズムにしてみました。いきなりとりづらいリズムです。(笑)

     リズムの刻み方の組み合わせはそれこそものすごくたくさんありますが、とりあえず8個の8分音符のうちの2個を4分音符に換えるという方法を考えると、8個の中から2個を選び出す組み合わせの数ですから 8×7÷2=28通りのリズムが考えられます。

  • 例11:左右をかえてみたetude1i6.mid(2kbyte:24秒)。
  • 例12:毎回リズムをかえてみたetude1i3.mid(2kbyte:24秒)。
  •  例11は、右手と左手で、1小節の8つの音符のうち「1番目、2番目を2倍」「7番目、8番目を2倍」というのを交互に繰り返すパターンです。例12は、1小節ごとに、延ばす音符を 1-2, 1-3, 1-4, 1-5, 1-6, 1-7, 1-8 と変えてゆくパターンです。小節の先頭だけは常に4分音符です。

     さてこうなると、28通り全部のパターンを並べてみたくなります。例としては同じ「ドレミファソファミレ」の繰り返しを使うことにして、28通りのパターンを並べてみました。test1i3.mid(3kbyte:38秒) 28回の「ドレミファソファミレ」のリズムは全部違います。

     これを聴いているとなんだか伴奏パターンのように聞こえてきます。適当に上の声部(とも言えないほど単純な音)をつけてみました。test1i3a.mid(4kbyte:39秒) 「ドレミファソファミレ」4回を1単位として、「ドーソーミー」を7回繰り返すだけです。

     <おまけのひとこと>
     お盆の最中は更新が不定期になるかもしれません。今日は子供が生き物の世話の当番で午前中学校に行っていました。その間の更新です。





    8月12日(月) ヒルベルト音楽

     さて、昨日は8個の音符の中から2個を選び出すすべての組み合わせのパターンの話をしました。そのパターンをどういう順序に並べるかという話はしませんでした。 音楽というのは本質的に時間軸を持っていますから、その意味では1次元です。2個の組み合わせというのは2次元的に表現できますから、それを並べるというのは2次元を1次元的に辿るということになります。

     と、ここまで考えるとヒルベルト曲線とかペアノ曲線なんていう言葉が頭に浮かびます。これらについてはいろいろ解説がありますのでここでは述べませんが、下の図のような形です。

    ヒルベルト曲線と音
    ヒルベルト曲線の座標を2つの音の組み合わせと見る

     上の図の横軸を例えばAパート、縦軸をBパートとします。AもBもドレミファソラシドの8音を出せるとすると、AとBの全ての音の組み合わせは8×8=64通りあります。上の図の64マスがその組み合わせの1つ1つに対応します。ヒルベルト曲線は、全てのマスを1回だけ通りますから、この曲線に沿って順番に音の組み合わせを作っていけば、64通り全ての音の組み合わせを1回ずつ実現する事になります。

     さらに、このヒルベルト曲線は必ず上下左右のどこかのマスに入ります。これはどういうことかというと、AパートかBパートのどちらかが必ず同じ高さの音となり、もう一方は必ず1つ上か下の音になるということです。つまり音の変化は跳躍は無く必ず隣に動きますし、しかも2パート同時に音が変わることはありません。

     これはきれいなコラールになるかもしれないと思ってMIDIデータにしてみました。hilbert5.mid(1kbyte:57秒)。いかがでしょうか。

     <おまけのひとこと>
     「フラクタル音楽」というのはいろいろあるんですが、こんな風にヒルベルト曲線を音にしてみましたという情報はみつけることができませんでした。





    8月13日(火) マトリクス音楽

     昨日の、2声部の音階のマトリクスの中を埋め尽くす軌道で定義される音楽というアイディアが面白くて、いくつか実験してみました。とりあえずこんな軌道を試してみました。 MIDIデータはこんな感じになります。mcurve2.mid(1kbyte:49秒)。

  • 全ての2つの音の組み合わせを1回だけ使う
  • 2声が同時に音が変化することはない
  • 音が変化するときは必ず上下どちらか隣の音に変化する
  •  という条件を満たします。

    軌道2

     小さくて見にくいですが楽譜もつけてみました。 これは私の作曲、と言ってもいいかと思います。(笑)

    軌道2の楽譜

     <おまけのひとこと>
     サカタBOXのコラムで、立原道造について書かれていました。

    この人を見ていると 「天才」 というのは、自分自身、自分の才能の内容すら理解できず、しかも、捨て去ることも解放されることも許されないんだ・・・ という事がしみじみわかります。
     とか、
    泣いてないでとにかく先に仕事してきなさい! 酒とグチは労働の後だ啄木君!
     とか、非常に面白いコラムでした。





    8月14日(水) 電子回路シミュレータ

     先日、あそびのコラム第27回で、長方形を正方形に分割するパズルが電気回路表現できるという話をご紹介しました。 実際に回路を組んで実験するのは大変なので、何か簡単に手に入るシミュレータで実験してみたら楽しそうだな、と思っていました。

     このあいだ、本屋さんをのぞいたら、講談社ブルーバックスから「CD-ROM付 電子回路シミュレータ入門」という本が出ているのをみつけたので、さっそく買ってきました。

    「電子回路シミュレータ入門」 CD-ROM付 電子回路シミュレータ入門』
    描いた回路がすぐチェックできる

    加藤ただし
    講談社ブルーバックスB1344
    2001年9月 初版第1刷
    ISBN4-06-257344-X
    1500円(税別)

     Altium社というところの“CircuitMaker 6.0 Student”というソフトウェアが8cmの小さなCD-ROMで付属しています。Student版ということで、使える部品点数が50個まで等の制約はありますが、体験版とか評価版とかではなく、ちゃんと完結した製品です。使える電子部品の種類もたくさんありますし、サンプルもたくさんついているし、マニュアルもしっかりしています。私がちょっと遊ぶ程度には別に何ら問題はありません。さっそくインストールして以下のような回路を描いて動かしてみました。

    正方形分割の回路図
    回路図

     使っている抵抗は13個、全て1kΩです。直流の定電圧電源を一番上につけて、一番下をアースします。この回路をシミュレートすると、それぞれの抵抗を流れる電流やそれぞれのポイントの電位など、簡単に見ることができます。この回路は以下の正方形分割に対応しています。

    正方形分割図
    正方形分割図

     このシミュレータはアナログもディジタルもその混在回路もシミュレーションできるそうで、デバイスもいろいろ使えます。でもそういった機能をいじってみる前に、たった1種類の抵抗値の抵抗だけの回路でいろいろ遊んでしまいました。明日以降1つ2つご紹介しようかと思っています。

     <おまけのひとこと>
     電子回路シミュレータというのはとても面白いんですが、もし専門家を目指すならば、やはり自分でハンダごてを持って回路を組んで、オシロスコープで電流や電圧を調べる経験を持っている方がはるかに有利だと思います。特にアナログ回路は、実際の回路では部品の精度のばらつきの問題や様々なノイズの問題等、理想的な理論通りに動いてくれない状況はたくさんあります。そういった時に問題解決をするためには、現実の回路を扱った経験がものをいいます。

     …とハード屋さんに言われるのですが、そういった教育も受けていないし経験も無い非専門家の私は、シミュレータで遊ぶくらいしか回路はわかりません。





    8月15日(木) 合成抵抗:立方体

     電子回路シミュレータで遊ぶ話の2回目です。大学などの電磁気学でオームの法則をやるあたりで、同じ抵抗値rの抵抗で多面体を組んで、合成抵抗を計算するといった演習問題をみかけます。(たとえばこちら。) まあ簡単なものならば計算してしまったほうがはやいんですが、多面体の3次元骨格を2次元のたてよこの格子状の回路図に落としこむ作業自体がパズルのようで楽しいのと、一度回路図を作ってしまえば任意の2点間の抵抗を測ったりできるのが楽しくて、回路図に落としてシミュレータで実験してみることにしました。 今日はとりあえず立方体です。

    立方体骨格を回路図に
    立方体の12本の稜を電気回路の抵抗器で構成したものを平面の回路図にしたもの

     さて、この回路図をシミュレータで作って、いろいろな点に定電圧電源をつないで実験してみました。下の図では、立方体の対角線の両端に電圧をかけています。

    立方体骨格回路図
    回路図

     実験は、(1).立方体の対角線、(2).面の対角線、(3).1本の稜の両端にそれぞれ電圧をかけて、それぞれの2点間の合成抵抗を測定してみました。あわせてそれぞれの例で、すべての頂点の電位を確認して、図示してみました。

    2点間の電位
    (1).立方体の対角線、(2).面の対角線、(3).1本の稜 に電圧をかけた場合の電位の分布

     3つの例でかけている電圧がちがいますが、これは各頂点の電位が整数になるように調整しているためです。 まんなかの例ではブリッジ回路のように、ちょうど等電位の頂点が出現するため、電流が流れない稜があります。(答を一応書いておくと、合成抵抗はそれぞれ (5/6)r、(3/4)r、(7/12)rとなります。)

     なお、今回利用しているシミュレータについてかかれた電子回路シミュレータで遊ぼうというページがありました。私のように1kΩの抵抗だけで遊んでいるわけではなくて、もっとまっとうな例が解説されていました。

     <おまけのひとこと>
     私のようなはんだづけが下手な者が実際に回路を組むと、「いもはんだ」とか「てんぷら」とか呼ばれる接触の悪いはんだづけをしてしまうことがあって、理論通りの動作をしてくれないといったことが起ります。(てんぷら、というのはハンダがてんぷらの衣のようにふわっとかぶさって、中は空洞で部品はつながっていないような状態を指します。) シミュレータだとこういったことがないからいいよな、と思っているとそれは大間違いで、画面上ではつながっているように見えても、実は線と線が微妙に離れていたりとか、結線したつもりが交差になっていたりとかといったことがあると、ちょうどハンダ付けを失敗したときと同様に、一見正しそうなんだけれどもどこかが接触していない、でもそれがどこだかわからないといった回路が出現します。

     実はもう少し複雑な多面体回路を作ってみたとき、予想と違った結果になってちょっと悩みました。(それもまた楽しいです。) 実際の回路をテスタで確認するように、シミュレータで1つ1つ部品の電流・電圧のチェックをして、意図に反して接続していなかった接点をみつけました。こんなことまでシミュレートできるなんて、最近のシミュレータってすごい。(←違います)




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