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びよよん

 身の回りのいろいろなものを、特に意味もなくなんとなく揺らしてみるとか叩いてみる、といった経験は皆さんおありだと思います。 何かが動くとか音が出るというのは、それだけで赤ちゃんだって大人だってわけもなくおもしろいものです。 たとえば小学校の行き帰りとか、傘などをフェンスに当てて歩いたりすると、傘の先がフェンスの縦棒に次々と当たってカタカタカタっと鳴ったりして、その手ごたえの感触と音が妙に楽しかったりしたものでした。

 私の通っていた中学校は木造二階建てのたいへん古い校舎でした。 建物はもちろん、いろいろな設備も古くて、たとえばいろいろな配管や配線類などもそのあたりにむき出しになっているようなつくりでした。 なまじ小学校が新築だっただけに、中学に入学したら設備のギャップが大きくていろいろ驚いたものでした。

 たしか2年生のときだったでしょうか、理科の授業中にその事件は起こりました。 理科の授業というと、よく先生が全員を教卓の周りに集めて実験を行ってみせたりすることがありました。 理科室というと、いくつかの机があって、それぞれの机には水道と流しがついていたりするものだと思います。 (私の知る限り、小学校から大学までずっとそうでした。) 当然教卓にも水道と流しがあります。 ある日、いつものように教卓を囲んで先生の実験を眺めていたら、突然、ぶしゅうという音がして水道から水が吹き上がり、あたりが水浸しになったことがありました。

 トンボが教室に入ってきた、とか、ヘリコプターが飛んでいった、とかいうだけで大騒ぎをするような素朴な中学生でしたから、それはもう大変な騒ぎになりました。 先生があわてて元栓を締めに行き、みんなであふれた水を雑巾で吸い取って絞る、という作業でその授業は終わってしまいました。 いま思うと、先生もよく機敏に行動されていたと思います。

 この騒ぎの中、蛇口のついた折れた水道管を持って、呆然と立っていた生徒がいました。 そう、この理科室の水道は、床からまっすぐ水道管が立ち上がって、その先に蛇口がついているというたいへん素朴なものでした。生徒の机の水道は、それでも机に穴をあけてそこを通っていたため、机が水道管を支えていたのですが、教卓の水道はなんの支えもなく、ただまっすぐ床から立ち上がっているだけでした。

 後にその某I君が語ったところによりますと、事件は次のようにして起こったのでした。

 「いや、最初に水道をちょっと引っ張ってみたんだ。そしたらびよよよんってゆれるもんだから、もうちょっと引っ張ったら、もっと大きく揺れるんじゃないかと思って引っ張ってみたんだ。 で、だんだん揺れが大きくなったもんだから、もっと大きく揺らそうかと思って引っ張る量を大きくしていったら、急に手ごたえがなくなって、水道管が戻らなくなって、そのままこっちへ倒れてきて・・・」

 今思い出しても感心するのは、先生も「ばかだなおまえ、そんなことしたら折れるにきまってるじゃないか」と言っただけで、とくにひどく叱りもしなかったことです。 みんな、この説明をきいて神妙な顔をしていましたが、私は内心おかしくてたまりませんでした。 でも、いかにも自分でもやってしまいそうなので、よく気をつけようと思った記憶があります。

 大人になった今でも、何かを揺らしてみたり叩いてみたりということを面白いと思います。でも、やりすぎると壊れるという教訓は大切にしたいものです。

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2001.10.18 hhase