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7月22日〜24日 南アルプス縦走 
<夜叉神峠登山口〜鳳凰三山
2,840m〜高嶺2,779m〜アサヨ峰2,799m〜栗沢山2,714m〜仙水峠〜北沢峠>

ここ数年梅雨明けを狙って休みを設定し、縦走の山へ行っている。
ただ、この梅雨明けってのが難しく、2007年は南アルプス塩見岳の予定を急遽北海道行きに変更した。・・・この年は海の日が早かったので、梅雨明けって言うよりも、梅雨の晴れ間狙いだったけれどだめだった。
この後は狙いはほぼ当たり、2008年は4泊5日で快晴の南アルプス荒川三山〜赤石岳〜聖岳、、2009年は2泊3日で南アルプス塩見岳〜蝙蝠岳で、前後は雨だったものの、メインの日は晴れた。
共に海の日の連休を利用したが、今年は一週ずらして、7/22〜25に的を絞った。仮に海の日前後に梅雨が明けていても、「梅雨明け十日」に入るだろうとの読みだった。

1日目 7月22日(木) 夜叉神峠登山口〜夜叉神峠〜辻山(2,584m)〜南御室小屋〜砂払岳〜薬師岳小屋(泊) 薬師岳(2,780m往復
2日目 7月23日(金)   薬師岳小屋〜薬師岳(2,780m)観音岳(2,840m)地蔵岳(2,764m)高嶺(2,779m)〜白鳳峠〜広河原峠〜早川尾根小屋(泊)
3日目 7月24日(土) 早川尾根小屋〜ミヨシノ頭〜アサヨ峰(2,799m)栗沢山(2,714m)〜仙水峠〜北沢峠 (バスで広河原→(乗り換え)→夜叉神峠登山口へ戻る
1日目 7月22日(木)  夜叉神峠登山口〜夜叉神峠〜辻山(2,584m)〜南御室小屋〜砂払岳〜薬師岳小屋(泊) 薬師岳(2,780m)往復

7月22日 夜叉神峠登山口に着いたのは5時ちょっと前だった。
この駐車場から先は一般者通行止めになっていて、ゲートが開くのは5時半。
5時15分頃になるとバスやタクシーが到着し始め、待機していた。
買って来たおにぎりを食べトイレも済ませ、ゲートが開くのとほぼ同時にゲートを背に出発した。

今回の山行は北沢峠に下りるので、ここには2日後の土曜日、広河原から芦安行きのバスに乗って戻って来ることになる。
平日だけあって、当然ながら駐車場は空き々きしていたが、下山の日は満車になっていることだろう。
そして、車内は恐ろしく暑くなっていることだろう・・・

鳳凰三山は2004年の海の日の連休に一回歩いている。その時は当初違う場所を予定していたが、天気が悪く、ここに変更した。
出発の前日、何度も家から鳳凰三山が見えるところまで歩いて行って(5分くらい)見えているか確認したことが今でも記憶に残っている。
その時は青木鉱泉から中道コースを登り、薬師岳〜観音岳〜地蔵岳と歩き、どんどこ沢を下り青木鉱泉に戻る周遊コースだった。
なので、夜叉神峠登山口から登るのは初めてになる。どんな道なんだろう。期待に胸が膨らむ。


どこのコースでもそうであるように、まずは急登から始まった。それも30分も歩くとなだらかな歩きやすい道に変わり、コースタイム通りの1時間で夜叉神峠に着いた。


夜叉神峠から白根三山を見る

思い起こせば、新婚旅行での北海道大雪山姿見の池までの軽いトレッキング、1ケ月後の上高地に次いで夜叉神峠まで来ている。季節は早春でまだ肌寒く、登山道にこそなかったものの、周囲には雪が残っていた覚えがある。そしてその時にペーターから「あれが北岳、あれが・・・」と山名を教えてもらい、いつかそれらの山に登ることはあるんだろうか、と思った。今回ここに再び立ったことは当時の新鮮な気持ちを思い起こさせ、感慨深いものがあった。

夜叉神峠から次の目安地である杖立峠までコースタイムで2時間。
途中なぜか杖立峠の道標がある大崖頭山(2,186m)の西肩を越えながら樹林帯を登る。
そろそろ休憩したいと思っていると、ちょっと先の何の変哲もないような場所で先行者が立ち止まっている。
とりあえずそこまで行ってみようと思い着いた先には木のベンチが置かれていた。先行者はここで休憩していたんだとわかるが、この絶妙な間隔に設置した人に感謝したい。
杖立峠から次のポイント苺平まで更に約2時間、汗をかきながらその先に待っている展望を楽しみにひたすら登る。が、苺平では休憩せず登山道を左手に入った「辻山」2,584mへ行く。
登山ガイドではこの辻山は通らない設定になっているが、道がある以上、決して素通りしないのがペーターの信条である。こうしたことで後で振り返ってみて行って良かったと思う峰がいくつもある。
白根三山縦走の際の「ボーコン沢ノ頭」、最終日にちょこっと寄った「広河内岳」、蝶ケ岳に行った時の「妖精の池」。このちょっとした寄り道が思いがけない展望や花との出会いをもたらしてくれる。
話しを戻して辻山は白根三山展望の地ともなっている。が、到着した9:50には周囲は完全なガスで展望はなかった。残念ではあるけれど、翌日に期待しよう。
ここまで来ると今夜の宿泊地「薬師岳小屋」までは2時間ほどなので、早いけれどお昼を食べることにした。その間に展望が開けることも期待しつつ。(結局は無理だった)

お昼を食べた後は40分ほどで「南御室小屋」に到着。
この小屋は、山小屋では稀な「湧水」がある。まずは小屋の前に引いているホースから出ている水でのどを潤した後、小屋の横へ行ってみる。
そこには輝くようなクルマユリが咲き、趣のある木の「とい」から流れ出る湧水があった。
更にこの場ではのどを潤すだけでなく、翌日分の水を十分に補充することを忘れてはならない。なぜなら今夜の宿泊の「薬師岳小屋」には天水しかないから。

薬師岳小屋の宿泊予約をしてあっても、この小屋に到着を報告し、薬師岳小屋に連絡を入れてもらうようになっていた。着いてみてわかったことだが、男性が一人で切り盛りしていたので、効率良く物事をこなすためだろう。

まもなく小屋、というところになって、思わず薬師岳山頂かと見間違うような白砂と巨岩の場所に出た。
あいにく山頂方向はガスだけれど、予想外のこの景色にそれまでの疲れは一気に飛んだ。

そして小屋のすぐ手前には一日目のメインと言ってもいいだろう「砂払岳」があり、1時間近く休んだ。
そして、待望の「タカネビランジ」に会うこともできた。

それでも小屋に着いたのは1時半と早く、受付をした後小屋の前でビールを飲むことにした。
350mlを一人2本飲んでもまだ時間が早かったので、展望は期待できないながら薬師岳山頂まで行ってみることにした。


山頂に行くとき前方に動く物が。カモシカだった。もっと近くで会いたかった。

白砂の広々した山頂は心が洗われるようだった。更にタカネビランジの可憐な花にも会い、明日また来るのだけれど、ずっとずっとこのままここにいたい気持ちになった。


タカネビランジの花 オンマウスで咲き始め

夕食は5時半ちょっと前からで、メインはおでん。見た目は少ないが4人で共通の小鉢が4種類、生野菜もあったりしたので満足行く食事だった。
食事後、夕焼けを期待し砂払岳まで行った。夕日は北岳の方角に沈み、薬師岳山頂の雲が少し赤くなった。7時過ぎまで山頂にいて小屋に戻り、8時の予定が7時半過ぎにいきなり消灯となったタイミングで寝た。この日の宿泊は20人くらいだった。

2日目 7月23日(金) 
 薬師岳小屋〜薬師岳
(2,780m)〜観音岳(2,840m)〜地蔵岳(2,764m)〜高嶺(2,779m)〜白鳳峠〜広河原峠〜早川尾根小屋(泊) 

2日目、明るくなり始めた頃起床し、真っ先に砂払岳山頂へ朝日を見に行った。
4時46分、ちょうど陽が昇るところで、反対方向の白根三山に陽が当たりはじめていて、前日見ることができなかった展望がそこにはあった。
この様子だと今日一日この展望を楽しませてくれることだろう。







マウスオンで山座同定
白根三山から右に目を移すと南アルプスの女王「仙丈ヶ岳」が優雅な山容を見せてくれていた。5日前はあの頂上にいた。

周囲の展望に感動しつつ、ふと下に目をやると。
タカネビランジに陽が差し、昨日とはまた違った美しさをかもし出していた。
そして、遠くには富士山。ほれぼれする朝の景色である。
小屋の朝食は5時半からだけれど、いつもの通りお弁当にしてもらってあり(前日のうちに渡されていた)、砂払岳下の展望の良いところで食べた。

その後小屋に戻り仕度をして6時過ぎに薬師岳山頂に向かって出発した。
この日の行動は鳳凰三山から、高嶺、白鳳峠、広河原峠の後、「早川尾根小屋」までで6時間みれば十分到着できる、ゆったりコースである。
出発が比較的遅かったので、朝、「南御室小屋」から出発して来た人たちとも一緒になった。
当初、南御室小屋は展望もないので、泊まる人は少ないだろうと思っていたが、水は豊富だしテントも張れる。薬師岳山頂へも1時間半で行けるので、人気あるのかもしれない。


薬師岳山頂と白根三山を望む
山頂到着後、ほとんどの人はそのまま観音岳に向かって歩いて行くが、ペーターの性格上、あっちの方が高い、と中道コースの方へ少し行ってみる。
確かに薬師岳の山頂は少し低く見える。(中央、白砂のところが山頂)

再び薬師岳の山頂に戻り、「タカネビランジ」を見ながら観音岳を目指す。
快晴の下で見ると前日より一段ときれいに見えるような気がして立ち止まってばかりになってしまう。
あちこちに蕾をつけた株があり、花の最盛期としてはもう少し先のようだった。
この株が咲いた時にはどれほど美しいんだろう。その時期にまた訪れてみたいものである。



いよいよここから気持ちの良い稜線歩きが始まる。
一回歩いたことがある道でもわくわくする気持ちは初めての時と同じである。


白砂の快適な登山道が続く



薬師岳から45分ほどで観音岳山頂へ到着。
ここが鳳凰三山の最高所、2,840mである。
薬師岳とは違い岩場の山頂であり、この岩の一番高いところまで行って休憩する。
そこでの楽しみは、三山最後の峰、「地蔵岳」のオベリスクの展望である。

ペーターは今回もあのてっぺんに登ることを楽しみにしている。



中央が地蔵岳「オベリスク」右手遠くに蓼科山〜八ヶ岳、奥に甲斐駒ケ岳


オベリスクに近づいた

観音岳から30分ほどで地蔵岳と高嶺への分岐に到着。暑くなってきたこともあり、この30分が長く感じた。
休憩後ザックをその場に置き、オベリスクを目指す。いったん下り、登り返すと「賽ノ河原」があり、多くのお地蔵さんが祭られている場所に出る。そこから更に登ると目の前にオベリスクが大きくたちはだかる。
私はいったん賽ノ河原で待機し、ペーター登頂の瞬間を待つことにした。
てっぺんには2人の先行者がいたため、少し待って登頂。中央に数本のロープがあり、それに体を預けて登っていくらしい。
見ていた限り、岩の麓までは行ってもてっぺんまで行く人は少ない。


これが登頂の姿。ペーターが立っているところが一番高いらしい。

オベリスクから戻り、置いてあったザックを担いだ後は、いよいよ初のコースである「高嶺」を目指す。
昨年家で時間がある時に、「日本百高山」のうち何座登ったか調べてみた。
ペーターのちょっと寄り道が大きく貢献し、登ってない山が14座と思いのほか登っていることが判明した。
そして今回の縦走コースではそのうちの2座通ることになり、そのうちの1座がこの高峰2,778mである。
先ほどの分岐から1時間ほどで到着。すでに5人ほど山頂にいたが、適当な岩をみつけ、お昼を食べることにした。
高嶺を過ぎたあとは、ところどころに咲く、ウスユキソウの可憐な花、大輪のシャクナゲを見ながら白鳳峠、赤薙沢ノ頭、広河原峠を通ると、まもなくしてこの日の宿泊地「早川尾根小屋」に到着した。
1時頃だった。


可憐なウスユキソウ

受付時、まず冷たい麦茶が出てきた。この小屋は沢水が豊富にあるが、このサービスに小屋の方の心遣いを感じた。
小屋は30人ほどの収容と小さい規模であるが二人で切り盛りしていた。そして到着時奥からはまな板でとんとん何かを刻んでいる音がしていた。
食事を含めて、実はあまり期待していなかった小屋だが、この音から食事が楽しみになった。
受付後前日と同じく350mlの缶ビールを2本飲んだ後も時間が早く小屋の前にいたところ、小屋の方がここから数分登ったところに北岳が展望できるところがあると教えてくれた。そして食事は当初4時半の予定だったけれど、まだ予約の6人が到着していないので、5時にしますとのことであったので、この展望のポイントに行ってみた。
なるほど、教えてくれただけあり、そこからは北岳が望めた。

結局5時になってもまだ6人は着いていなかったけれど、食事になった。食事を取ったのは、私達を含めて4人のみで、2人は自炊だった。
食事は、幕の内弁当風の器におかずが盛られていて、なんとイカとタコの刺身がある。他には野菜炒めに焼き魚など。まな板の音はこうして豪華なおかずになっていた。

到着していなかった6人2グループは6時頃到着した。
聞けば、13時間かかって七丈小屋から甲斐駒ケ岳を通ってここまで来たとのことだった。
13時間歩いたと言えば、それはそれですごいことではあるけれど、こんなに遅くに小屋に着くことに対してどう思っているのだろうか。
地図を見れば、標準コースタイムは9時間。甲斐駒の山頂でゆっくりし過ぎたと言っていたが、時間配分を計算していないのだろうか。
遅く着いた場合の食事の準備については何も思うところはないのだろうか。
小さい小屋であればなお更食事の提供も大変なのに。
小屋の方からは注意を受けていたが、果たしてその真意を理解しているかは疑わしいと思いつつ、私達は最後に北岳の展望地点に行ってみた。
一日の締めとしてふさわしい夕焼けであった。

3日目 7月24日(土) 
 早川尾根小屋〜ミヨシノ頭〜アサヨ峰
(2,799m)〜栗沢山(2,714m)〜仙水峠〜北沢峠 (バスで広河原→(乗り換え)→夜叉神峠登山口へ戻る

3日目の起床は4時、予約の際、朝食をお弁当でとお願いしたところ、お弁当は作っていなくて、変わりに、朝食時間が早いとのことだった。
その通りに朝食は4時半前から始まった。
ちなみにこの小屋は食堂はないので、全員が布団を片付けた後テーブルを出して朝食となった。
夕食と同様に、心のこもった朝食であった。
最終日はアサヨ峰をメインとした6時間ほどの行程。
短い行程であるが、家に帰ってからも飲みたいと思い、沢の水をいっぱい補給し、5時に出発した。
前日に登ったポイントまで行くと、北岳がその雄姿を堂々と披露してくれていた。
今日も一日天気は良さそうだ。


アサヨ峰と仙丈ケ岳を望む

10分くらい朝の景色を楽しんで、アサヨ峰に向かって出発。
このアサヨ峰も日本百高山に入っている山である。
ここに登れば、残る百高山は12座。この先何座まで登ることができるであろうか。
制覇はできないが、それでも少しづつ減って行くのは楽しみなことである。


振り返れば鳳凰三山と富士山 オベリスクは遠くなった


前方には甲斐駒ケ岳と右手に八ヶ岳



アサヨ峰に向かって登っていると、すでに山頂に何人かが見えた。
同じ小屋に泊まった人の他に、朝北沢峠を出発した人もすでに山頂にいるのだろうか。

3時間かからず到着した山頂2,799mもやはり360度の大展望。
本当に素晴らしいの一言に尽きる。
この時点でまだ7:30。甲斐駒ケ岳まで行きたい衝動に駆られたが、そういうつもりで歩いて来てはいないので、見るだけにとどめておく。


次は栗沢山に向かって

アサヨ峰から栗沢山2,714mまでは1時間。
到着した山頂は甲斐駒ケ岳がより近くなり、かっこよく聳えていた。
時間は9:20、ここから北沢峠までは2時間と少し。これからなら北沢峠1:05発のバスに乗ることができそうだ。
早く北沢峠に着いたところで、展望はないから最後になるこの展望を心行くまで堪能しよう、ということで、まだ早いけれどお昼を食べることにした。
この時間になると北沢峠から登って来る人も多くなっていた。
ここで休憩し引き返す人もいれば、アサヨ峰まで行く人、それぞれであった。
お昼を食べ終わる頃、近くにいた人が「雷鳥がいる」と教えてくれた。
なんと、私のすぐ後ろの岩の上にいるではないか。教えてくれたことに感謝。

雷鳥との遭遇後、10時半に栗沢山を後にし仙水峠を目指す。ペーターは栗沢山から直接北沢峠に下りたいようであったが、私が仙水峠経由を主張。甲斐駒ケ岳に登った時、仙水峠から行ってるので、これでつながることになる。
下るにつれ雲が沸きあがり、甲斐駒ケ岳をいい感じに装っていた。
この角度から見る摩利支天もかっこいい。
北沢峠には12時半頃到着、バスのチケットを購入し、バス待ち人の最終に着並ぶ。まだこの時点ではベンチで待つことができたが、その後下って来た集団はベンチに座ることができずに立っていた。その中の一人が、詰めてもらうようにお願いしていたが、空いたベンチに後ろから入ってしまう人もいた。
大勢待っていたが、バスは3台来て、補助椅子を使うこともなく全員乗り込み、広河原へ向かって出発した。
すぐの林道上にはニホンジカがいることを運転手さんが教えてくれる。このニホンジカたちが高山植物を食べているのであるが、生きて行くためには仕方がないのだろう。

広河原で「芦安」行きのバスに乗り換え、夜叉神峠登山口まで戻った。
土曜日だけあり駐車場はいっぱいであった。
更にその下の芦安の駐車場もいっぱいであった。

こうして恒例となった梅雨明けの山行は終わった。
無理のない行程であっても無事に帰宅できたこと、そしてなんと言っても最高の展望に恵まれたことに感謝したい。

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