美香の部屋

去る、2003年1月5日 早朝、桑原美香さんがご逝去されました。
享年34歳。
故人のご冥福を心よりお祈りいたします。


弔辞

例年に無く、雪が多い正月です。暖かくなったらまた一緒にもうひと芝居打つか、と本気で思っていましたが、残念というより他ありません。訃報を聞いた日の午前中、何かしなければふさぎの虫に取り付かれるぞ、と思い、ものぐさな私も、いつも以上に一生懸命に雪かきをしました。でも、やはり思い出してしまいます。美香ステップ、サルカード、数々の飲み会。中村俊輔のファンだったこと。私が酔っ払って小指を骨折したとき、「おめでとう」と皮肉を言ってくれた整形外科医院の事務嬢であった君のこと。そして、ご両親、ご家族の無念さを。

美香さんとは、一九八九年の夏、初めて会いましたね。そのときの私の印象は、かなりかわいいが、気が強い、でした。その後、君は劇団のまさにアイドルとなり、大活躍。コカコーラのようなさわやかな芝居をやるんだと、張り切っていました。十四年間も劇団を続けることができたことに、美香さんの存在が大きく影響したのは間違いありません。結婚後も、ベテランの存在感でさまざまなキャラクターを力いっぱい演じきってくれました。おかげで劇団のホームページは美香さんの写真で一杯です。

ところで君は、芝居の稽古でも、いつも自信に満ち、堂々としていましたね。何か、生きるエネルギーのようなものを大変強く感じたものです。演出家である私の指導にも我慢強く対応し、その一方で、常に全体を考え、深い愛情を持って私たちを見守っていてくれました。その強い自信は一体どこから沸いてくるのか、君に聞いたことがあります。君はこう答えてくれました。自分は、怖いもの知らずだった。今は怖い。でも、これまでどんな窮地に追い込まれても、必ず最後の最後に奇跡が起きて、困難を乗り越えてきた。今回も、最後には何事もうまく行くのではないかと。だから大丈夫だよと、自分のほうが辛いはずなのに、私たちをまるで慰めてくれるかのような強さと愛情を示してくれました。それだけのことを私が君にしてあげられたかどうか、悔やまれます。

さて、こうしてまた、私は一人になりました。これからも君のように、強く、前向きに、明るく、愛情深く、生きて行こうと思います。劇団の仲間と、顔を上げ、声掛け合って、知恵と勇気で困難を乗り越えます。そして、この理不尽な事態に高ぶる感情を、整理したいと思います。残念ながら、君と一緒には行かれません。でもなんだかこれが最後のような気がしません。もしかしたら「最後の奇跡」はこれから訪れるのではないのかという予感さえあります。希望をたくさんもらいました。ですから私は全然さびしく無いのです。がんばりすぎてちょっと疲れたでしょうから、どうか十分に休んでください。本当にありがとう。さようなら。

二〇〇三年一月八日

劇団沸騰100g 主宰 木口浩史


美香の結婚式の模様をお伝えします。

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無事に式を終えた二人です。この後リムジンで走り去ります。


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披露宴。「劇祭5」のバナナーズみたい。


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