歴史・戦記 ビジネス書 建築・美術書 その他 諸々 面白いと思う本を 私の印象と共にお知らせいたします。

■アーロン収容所
    会田雄次氏著  中公文庫
 
   戦争という特殊な環境を経験された著者は、軍隊が組織として機能している時 敗戦の混乱の時 収容所暮らしをしている時 それぞれ光る人材が変わるという事に気がつく。 極限の状態にあっても 感情に流されること無く 冷静で一定の視線で書かれた ビルマ戦線 時の経過の中での人景色描写。 戦争の中で織り成す日本人の行動を多面的に観察・研究する一冊。 


■インパール作戦  日本陸軍最後の大決戦
    土門周平氏著  PHP

   第四編 攻撃戦闘から読むと 現実に何が起こったのかが見えて来る。 その後 前編に立ち戻って そういう現実を生んだ背景や流れを読み解いていくと理解が深くなるようだ。  
特に第四章 極限の戦争 や 最終項 殿軍に居た宮崎繁三郎少将指揮下の支隊の撤退の記述は、強く胸に留まる。 極限状態のトップの行動は 前線で傷ついた同胞にどういう結果をもたらしたか。 一方で それを見て、何とかしようと苦悶した日本人がいる。  醜悪と信念。  日本人の中に あきらかに存在する二種類のDNA。  同じ陸軍士官学校を出て 将軍と呼ばれる立場にいたエリートたちの土壇場の行動を分けたものは何か。 人材の見極め 登用の難しさは、土壇場でないと見えてこない・・・その人の本質・本性。 


■坂井三郎 零戦の運命 講談社
    坂井三郎氏著

  台南航空隊の零戦パイロットとして太平洋戦争を戦い 60機以上の撃墜記録を残した 日本海軍のエースである。 彼は言う。 「エースになろうとして なったのではない」 と。  相手を撃墜する事より 自分が落とされない事を必死に考えて実践したのだそうだ。 落とされないためには 敵より先に敵を発見することだ・・・だから視力を鍛える事を真剣に考え・実践したのである。 (野球のために 眼に悪いことは一切しない イチローの行動に通じると感じる。) 
「人から見れば 馬鹿な・・・と思われる事でも 試してみる しぶとく粘る・・・その積み重ねである。  その結果 人より長く飛ぶ事ができた。 60機におよぶ 撃墜記録は その結果にすぎない。」  ここに 大事なメッセージが込められている。 社会的ステータスを狙って行動するのではなく、ある信念でしつこく粘り強く研究・実践した結果 ステータスが付いてくるのが自然なのだ。 手段が目的化するのはおかしな事。 そうと判っていても 自分に媚びて来る人を可愛がり、信念で行動する扱いにくい人は遠ざけるのは 人の世の常。 ほんの少しでも それが変わったら 日本の未来は より明るいものになるのだろうか。 

歯に衣着せぬ 大空のサムライ 腹の底から湧き上がる渾身の一撃が綴られている。


■坂井三郎空戦記録  講談社
    坂井三郎氏著

  零戦のエース ラバウル転戦。   エースにも心の隙間があったのか・・・?。 ガダルカナル上空で被弾・・・重症を負い 視力も失う。 意識は朦朧とし、出血多量で咽喉が渇き 眠気が襲う。 被弾しガタガタの零戦 キャノピーに穴があいて風が吹き込むコックピット。 その時も 彼は、持ち前のしぶとい粘りを忘れなかった。
止血処置 視力回復の努力 水分補給 現在の自分の位置推定と帰還方位の割り出し 一つひとつ 冷静に 確実に対処していく。 ラバウル基地の誰もが撃墜されたと思っていた所へ 彼は帰ってくるのだ。 
奇跡は、絶対無理だと思える状況にあっても 粘り強く しぶとく 頑固に 愚直に 必要な事を一つひとつ割り出し 整理し 考え 行動する・・・ それらを確実に行う事によって 驚異的な結果がもたらされる。  
彼の背中から 彼の本から 教えてもらった。

  坂井三郎氏のように 人の言う事を鵜呑みにせず 疑ってかかる、 また 周囲の目を気にせず 独自の考えを確かめようとする、 確かめた事は 変人と言われても遣り通す・・・個性的な行動は、結果的に 戦時中のパイロットにとって重要な要素だったようだ。  戦時下の某国の軍隊で パイロット養成する時に 心理学者にパイロットとして有望な人材を選抜してもらうという話になり 意気に燃えた心理学者が自信を持って選抜したものの 選抜組は全員戦死してしまったそうだ。 それを聞いた心理学者は 信じられず 呆然としたそうだ。 彼はショックから立ち直った後で 生き残ったパイロットと戦死したパイロットの違いを分析した。
その結果 生き残ったパイロットは、マニュアルどおりに行動しない 天邪鬼な人達だったという事が判った。 人の言う事、マニュアルより 自分の経験から学んだ事を大事にする。 自分で感じた事や自分で確かめたやり方を実践しようとする。 ルールは変わるもの またルールはあっても現場適応を第一に・・・臨機応変な柔らか頭を持っている・・・そういう人が 戦時下のパイロットにとって大事な素養だったようだ。 

大空のエースになった人達の 行動・考え方を調べてみると 以外な事が判る時がある。 説明されれば なるほど・・・と思えるのだが、そういう事に自ら気が付く 行動できる 実践できる となると 1000人の中でも数人に限られるだろう。 そう言う人材を伸ばし 登用することが出来たら、日本はもう一段上の階段を登れるのではないだろうか。


■失敗の本質  日本軍の組織論的研究
    戸部良一氏 寺本義也氏 鎌田伸一氏 
    杉之尾孝生氏 村井友秀氏 野中郁次郎氏 共著   ダイヤモンド社

   ミッドウェー作戦 インパール作戦 ガダルカナル戦 レイテ作戦 等 太平洋戦争中の日本軍の失敗について研究し まとめた報告書。 防衛大の教官を中心とする六名の研究者の共著。 当時の軍人は、日本人のエリートを擁した集団であったはず。 選りすぐりの日本人の集団を持ってしても、かくのごとき失敗を重ねる。 また それらの失敗には共通する特徴があるように思える。 最初に結論ありき・・・情報や分析結果は、都合よく 帰結させたい結論に合せようとしていないだろうか。 常に広範囲な情報収集や分析ならびに研究は、怠り無く行わねばならない。 相手の過小評価、自分に都合の良い解釈、精神論的勢いや感情論・面子は、厳に戒め控えなければならいない。 同じ日本人の遺伝子を持つ 現代の我々も そういう思考に陥る事を戒めたい。 
一方で 戒めても失敗はするものなのだ。 真に避けなければならないのは、失敗を恐れて何もしない事。 戦っている相手も失敗する。 戦いは、相手より多くの致命的失敗をした方が敗れる。 偉大な先達各位の経験から 失敗に陥りやすい癖・気質・考え方を正し 果敢に挑戦すればよい・・・と考えるのである。


■アイディアの作り方
   James web young 著

  アイディアとは 既存事実の新しい組み合わせ。 新しい組み合わせを発見する才能は、物事の関連性を見出すスキルを高める事によりもたらされる。 アイディアを作るには、正しいやり方がある。 
膨大な特殊・一般情報の収集。 気の遠くなる整理・咀嚼作業。 考える事を放棄 距離を置く。 アイディアの到来。 信頼の置ける人への確認。 多くの場合 情報収集と整理・咀嚼・・・という準備仕事をしないで、アイディアを出そうとするが これは間違いである・・・と本書は述べている。 先の失敗の本質で感じた 最初に結論ありき・・・の対極の思考・行動体系に思える。 
著者は故人であるが、広告コピーの大家であり、本書は今も隠れたベストセラーなのだそうだ。


■関が原
    司馬遼太郎氏著

   関が原 上・中・下巻〜城塞 上・中・下巻 計6冊は 関が原の戦いから大阪の陣で豊臣家が滅亡するまでの物語である。 関が原では 石田三成の家老 島左近の視線を中心に時代描写している。 司馬遼太郎氏の 歯切れの良い文章 深い時代背景 人間心理眼 魅力である。 
   三成に過ぎしものが二つあり、島の左近に 佐和山の城。  当代の名士 島 左近が、如何にして年下の三成に仕えたか・・・。 歴史は勝者が作るもの。 敗軍の将 石田三成像は歪められて、後世に伝えられたことは間違いない。 


■城塞
    司馬遼太郎氏著

   大坂夏の陣 冬の陣 の物語。  関が原に破れた西軍方の浪人衆は 豊臣家の呼びかけを受けて、大坂城に集結する。 毛利勝永 明石全登 後藤又兵衛 真田幸村 自分の力量を世に示す土俵を求めて集まった大名・家老級の浪人たち。 慧眼鋭く 戦略的思考冴え 人物掌握の魅力のオーラを放つ者 自己顕示欲の強い者 死に場所を求めて来た者・・・一方で人材不足でレベル低下著しい大坂譜代衆との軋轢 全軍を掌握し 束ね 推し進める求心力の欠乏・リーダーの不在。 当時の豊臣家の家老は、片桐且元が去り、不在の中 大野治長が担っていた。 しかし彼は 淀殿の乳母である大蔵卿の局の息子。 戦経験も乏しく、豊臣家の執事役が精一杯の器量。 年若い秀頼や淀殿を補佐し 彼らに代わって全軍をまとめる度量があるようには思えない。 光る部下の能力を活かせない 束ねられない リーダーに率いられた集団は悲惨だ。


■ローマ人の物語 U ハンニバル戦記
    塩野七生氏著

   カルタゴとローマのポエニ戦争。 歴史の教科書では一行あるかないかの事出来事にフォーカス。 アルプスを越えてローマに攻め込んだハンニバル軍。 カンネの戦いで迎え撃つローマ軍。 ローマ自慢の重装歩兵を主力にした 密集フォーメーションは、ハンニバルの巧みな鶴翼包囲線に引き込まれていく。 

   後年 若きスピキオが登場、アフリカのカルタゴ本国に攻め込む。 ザマの会戦で見せた スピキオのフォーメーションの冴え。 カルタゴの象部隊の突撃力をかわし 形勢逆転。 二人の天才的な戦略家の物語。 
   しかしながら 一旦ヒーローになり ステータスを得た後の処し方が難しい。 なまじ高みに登ったがゆえに、ぼろが出て 失脚すると一層惨めな醜態をさらす。 人から嫉み 疎まれたら暗殺の危機もあるわけである。 一発当てた その後が大事なんだよ・・・ 更に賢く、必死に考えて うまく処しなさい・・・そういう無言の教えに思えてならない。


■諸葛孔明
    陳 瞬臣

  西暦で言うと 200年前後・・・中国の有名な三国志のお話。 最初はたくさん人の名前が登場し、困難するが、添付されている人名とプロフィールを記したカードが役に立つ。 次第に読み進めると 優勝劣敗が進み 登場人物も絞られてくる。 最初の膨大な登場人物を理解するというバウンダリーを超えてしまえば、あとは楽しい物語である。   弱小国の人材不足 総力戦の疲弊。 少ない人材から生まれた 少数の有能な部下も ある意味では ライバルが少なく 忠告してくれる同僚に乏しく 代替する人材が居ない為に 独善的な負の部分が増長してしまうものなのか。  

■MADE IN JAPAN 
    盛田昭夫 下村満子 E ラインゴールド   朝日文庫

  ソニーの創業者の一人 故盛田昭夫氏の自叙伝。 人をひきつける彼の魅力に溢れた本。 アメリカで、大量の注文を提示されたトランジスタラジオ。 その時 盛田氏は バスタブ カーブを描いて見せた。 数が少ないときは高く 数量の増加とともに大量生産の効果によって価格は下がる。 しかしある所から 価格は 数量と共に上昇カーブに変わる。  あまりに大量な需要は、設備投資によって 安くならなくなる。 また投資をしても 需要が続くという保証は低く、リスクが大きくなる。 買う立場 作る側 双方の調度良い折り合える点というものがある・・・という教えなのだろう。  
黎明のSONY 何も無いけど 夢だけは大きく明るかった。 そして その夢を具現化するエネルギーと知恵に満ち溢れていた。


■土光敏夫 信念の言葉
    PHP選書             PHP研究所 

  IHI 東芝 経団連。 私が知っている 土光さんは すでに経団連のトップだった。 
東芝時代の土光さんを知る 知り合いがいた。 IHIの時代は まったく知る術がない。
そんな昔の 清貧・愚直な経営者の話。  
以下に一部 本文から引用する。

  能力には高低の差がある。 しかし それは知れたものだ。 むしろ能力のタイプの違いの方が大きい。 その能力は 上とか下とかというものではない。 能力とは自力の高さと幅だといえる。

  私達は 極わずかだが 火種の様な人がいる事を知っている。 自らカッカと火を発して燃えている人たちだ。 その人たちのそばにいると 火花がふりかかり 熱気が伝わってくるような感じを受ける。 誰にも皆 火種はある。 必ずある。 他の人からもらい火するようでは情けない。 自分の火種には 自分で火をつけて燃え上がらせよう。


    
■ニワトリを殺すな           幻冬舎
     ケビン D ワン

  本田宗一郎の考え方 HONDAの企業文化の寓話・・・と言われている。
傷ついたニワトリが一羽いると 周囲のニワトリは 一斉に傷ついた一羽のニワトリを突いて殺してしまう。

傷ついたニワトリは 何かに失敗した人の例え。 失敗した人を責めて 潰してはいけない。 今までに無い事に挑戦すれば 失敗するのが当たり前。 失敗を責めて 挑戦する心を失う事が 一番いけない。 むしろ失敗した過程の試行錯誤や 失敗の理由・原因について どう考えたかが大事。 試行錯誤の過程や失敗の原因について 暗黙の知識を形式の知識にして 議論する事が 真に大切なのだ。 


■俺の考え
     本田宗一郎          新潮文庫

   下る事を知る人・・・のくだりは 一読価値がある。

   知恵とは 見たり聞いたり試したりの三つの知恵で出来ている。 見たり聞いたりは迫力が無いし 人に訴える力がない。 試した・・・という知恵が 人を感動させ しかも 自分の本当の力になる。 

  そこには ニワトリを殺すな・・・に通じる 彼の哲学がある。

★★★★★★★★★ 【 2007/4追加 】 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 ■仕掛け 壊し 奪い去る アメリカの論理  原田武夫の東大講義録
     原田 武夫 氏        ブックマン社

  私の持論と良く似た話が印象的な 第4講 新しい教養は 一読の価値があると お薦めしたい。
 ポイントを 本文から 抜粋させて頂き ご紹介すると・・・ 物事の9割以上の真実は 言わば その辺にこ ろがっている。 9割分っていれば その情報を精査・分析・類推することで 10割察しがつくものだ。  真 意を汲み取る訓練が必要なのである。   以上 情報のリテラシーに関して・・・。

 ■最高指導者だけが知っている 日本の真実 
      副島 隆彦 氏        成甲書房
  色々な方の いろいろな意見 主張 を聞いてみよう。 どれが正しくて どれが間違えなんて無いのでしょう。  主張に聴くべき旨有り 対極の論理も同時に成り立つ。

 ■マネーの公理
      マックス ギュンター 氏     日経BP社
  試してご覧。 知識は実践の為のもの。 試さぬ知識は・・・。 しかしながら この本に書いてある事を 実践するのは 骨が折れますでしょう。 何代にも渡って 培われ 積み重ねられ しかも日本人には馴染みの薄いナレッジ・・・こういう知恵の伝承って 中々希少なのかもしれません。

 ■アメリカ スーパーエリート教育
      石角 莞爾 氏        The JAPAN TIMES
  NY JFK に向かう飛行機の中で見た映画 ショーン コネリー 主演の  「小説家を見つけたら」。  映画に登場する ニューヨーク屈指の名門 メイラー キャロゥ校。  プレップスクールとは どんな所?

 ■日本発 ハーバード経由 行き先不明
      森川 正康 氏       アルク新書
  淡々と書かれた アメリカ〜イギリスの学校生活。 高校 スタンフォード ハーバード ケンブリッジ 。

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建築関係

■Taliesin
     Frank Lioyd Wright  ADA EDITOR TOKYO 

  フランク ロイド ライトのタリアセンの家。  彼が日本に滞在したときに収集したと思われるアジアの仏像を 彼の建物の中に配置し、独特の雰囲気を作り出している。 彼が造形する家と アジアの仏像のコラボレーションが醸し出す雰囲気は一見の価値がある。

■Contemporary Thai
                      ASIA BOOKS

  表紙を飾る大邸宅は、大富豪のアメリカ人投資家が、チェンマイに建てた家である。 今は懐かしき TVプログラム・・・道浪漫で 宮本亜門氏が訪れ、紹介している。 アジアのリラクゼーション 夢の様な大邸宅である。 書斎にしている部屋の壁には アジアの木彫りが飾られている。  これは ミャンマー製のアンティーク木彫りが飾られているバンコクのジムトンプソンの家のインイパイアーされた様に思える。 何れもすばらしく芸術性が高く、建物が美術の域に到達している感覚を覚える。

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