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世界を知る力
   寺島実郎著  PHP新書  2010年1月5日 初版  720円

  本文172頁〜179頁から 印象的なパラグラフを引用させて頂く。

 大量のデータにアクセスできるようになるにつれ、膨大な情報の中から筋道立てて体系化したものの見方や考え方を作って行くのがますます大変になってきている。 メディアも体系化した情報の提供からはどんどん遠ざかり ちぎっては投げ ちぎっては投げで 断片的な情報ばかりを扱うようになった。  ばらばらな情報といかに付き合えば 私達は自分なりの世界像 -仮説いってもいいだろう- を構築していけるだろう。

  中 略

 古本屋通いの何が ばらばらな情報を統合していく上でのトレーニングになるかと言えば 目当ての本以外のそれまで意識しなかった あるいは 知らなかった本が同じ棚や 近くに並んでいるのを目にして 手に取ることで私達に 思いがけぬ相関の発見 を促すからである。 

  中 略

 本の前に立って、じっと本を眺めて、手にとって考える。 これが重要なのである。 情報と情報の相関は、表紙だけではわからない事が多いからだ。 なぜこの本がここに? と思ったら目次を開いてみる。 すると表題からでは伝わらなかった斬新な切り口が見えたりする。 そういう発見を一つ一つ積み重ねてていくことで、情報相互の関連や無関係に見えていた現象の相関などがだんだん見えてくるようになる。 そのうち個々の情報をプロットする座標軸の様なものが頭の中に形成されていき、座標軸そのものが多次元的なものに発展していく。 知識が全体知へと高まっていく。

  中 略

 書を捨てず街に出よう。 文献だけ読んでいれば世界はつかめると勘違いする人が出るかも知れない。世界を知る力を養うためには、 大空から世界を見渡す 「鳥の目」 と しっかり地面を見つめる「虫の目」の両方が必要だと考えている。 虫の目を鍛えるのは なんと行ってもフィールドワークである。 出張目的で外国に行っても 空港からビジネス目的地へ直行して仕事を終えたら さようなら などという事はまずしない。 必ずブラブラと地元を歩く時間を作る。 無駄と言っていいだろう。 しかし 虫の目を鍛えるにはこれが大切なのだ。



 上記の引用部分は琴線に触れた。 仕事で試行錯誤しながら実践して来た方法に似ているのである。 関係ありそうな本を探して読む。 出来るだけ多くの人の話を聴きに行く。 エキジビション デモ ショールーム 見本 企業 技術者 関連性がありそうな処も 一見関連性が乏しそうな処も当たってみる。 出来るだけ広く 直感・嗅覚交えて情報は多いほうがいい。 無駄も多いが 実はこれが後で効いて来る。 思いがけぬ相関の発見とはそうした努力の結果導かれる事が多いのは 実感である。  そういう事をしながら 外国旅行に出掛けると 更に違った角度から 思いもしない関連性が見えたり 仮説が確かめられることが多い。  反対に 海外で直感したことを 前者の方法で調べていくと 新たな関連性が見えてくる。  これらの関連性の気づきは 時間とエネルギーに比例してではなく、 ある日突然 非連続で立ち上がる トルネードに似ている。  成果主義目標管理に毒された社会では中々芽生えぬノウハウであるが、 目標管理の弊害で成果の出そうなことしかしなくなってしまった社会の閉塞感を吹き飛ばすには この方法が良い。 しかし 成果主義とか グローバルスタンダードを押し付けられ それ慣れてしまうと 中々出来ないものなのだ。  失われた20年の閉塞感を吹き飛ばすには こういうアプローチが良いのではないか。

 しかし こういうロジックで膨大な情報から発見し語れる人は少なく こういう論理で語られる話は長くて因子が多く わかりやすい話に慣れた人にとって苦痛であろう。 話を理解するには 聴く側のバァッファリングメモリーの容量と理解能力もたくさん要求するのだ。




遠くへ行きたい・旅物語
Travel to Myanmar
Mr. Yang. All right resreved .