タイ 古式 マッサージ


「マッサージを教えてあげるから ここで働きなさい。」

タイ古式マッサージしてもらっている時に その店のママが私に言った。

「えっ?  あははは。」

初めて訪れた店のママさんが 私の肩をマッサージをしながら 突然 言ったのだ。 たどたどしい日本語で。 私は 返す言葉を見失い 思わず笑ってしまった。 初めての店で そんな事を言われ印象に残ったというのもあるが、ママさんは 手で触れるだけで その人の健康状態がわかるらしい。 ここはいいけど これが駄目・・・とはっきり言うのだ。 以来 その店が気に入り たまに通っている。



ある日ママさんは タイに帰国していて不在。  マッサージしてくれたのは別の人だった。 この人は タイ北部の出身で、ビルマの事も良く知っていて 会話が楽しい。  この時のおしゃべりのテーマは 不在中のママさんの事になった。

「ここのママさんはすごいですよ。 手を見ただけで 技量とか 向き不向きがわかるらしいんですよ。」
「へえ〜。 僕が初めて来た時も 悪い所を言い当てたっけ。」
「そうそう そうなんですよ。」
「それからさ 最初に来た時 マッサージを教えるから ここで働きなさい・・・って言われてさ 面食らったよ。」
「あ・・・それ あなたで二人目ですよ。 体つきとか手とか 何かで 向いている人が判るみたいなんですよ。」
「へえ〜。」
「実は この店の採用面接で ママが 『手を見せて』 と言ったんです。 それで手を見せたら 『はい 合格よ』 ですって。」
「なに それ。」
「実地試験やらないで いいのですか? と聞いても 『手を見れば判るからいい』 と言うのです。」
「信じられないね。」
「でしょう? 」

同じタイの人から見ても ・・・ちょっと変わったママさんらしい。



ある時 手の平をマッサージしていると とても痛かったので 聞いてみた。

「そこが特に痛い。 どこか悪い処があるの?」
「ここは 手首が間接炎を起こしているんですよ。」
「えっ 忘れていたけど 去年 間接炎で手が腫上がって グローブみたいになっちゃってさ・・・ 整形外科で注射された事を思い出したよ。」
「そうでしょう。 この間接炎の影響だから 肘を押すと痛いでしょう。」
「イテテテ・・・」
「それから腕の付け根と胸の間のここ そして 肩から首にかけて筋が張っていて あなたの色々な症状は みんな手首の間接炎から来ていると思いますよ。 」
「・・・」
「こんな状態なら 時々腕に力が入らない事とか 手が痺れる事があるでしょう。」
「・・・ すごいね。」

一年以上前 湿布
しても痛くて眠れず パンパンに腫上がった手を見てもらった整形外科では 二日がかりで レントゲン撮影し 血液検査して 間接炎と診断されたのだけれども、ここでは 触っただけで 言い当ててしまう。 ワットポーの偉い先生なら 見ただけで 悪い所を見抜くそうだ。 タイ古式マッサージ 恐るべし。  しかも間接炎の指摘は 本人も自覚症状が無い時だったので 驚きも大きかった。  西洋医学とタイ古式マッサージ。 理論と経験則・・・アプローチは違うが たどり着いた結論は同じ。 しかし 人間の経験則は磨かれると とても早く結論にたどり着く事が多い。 ベテラン技術者の直感と似ている。 

「ワットポー(バンコクの有名なお寺で マッサージの総本山)で免許とると どれぐらい 時間がかかるの?」
「免許に必要な時間は短いです。 でも 基本中の基本を覚えるだけなんで それだでけは使い物にならないですよ。 そこから 腕のいい師匠に付いて 技を盗んで それを自分で磨かなきゃ駄目です。 ここのママさんの技術を盗んで 磨く事ができるから 仕事は楽しいですよ。」

技を盗んで磨く という彼女の言葉が 私の耳に残った。



東京の中の小さなタイランド。
私は疲れた時 タイ古式マッサージへ行く。
体調が悪い時 マッサージをしてもらうと 元気になる。
幸いなことに 東京には たくさんのタイ古式マッサージ屋さんがある。
タイまで行く時間もないけれど タイの癒しに浸りたいとき・・・ 時々 元気をもらいに行って来るのだ。


 

遠くへ行きたい・旅物語
Travel to Myanmar
Mr. Yang. All right resreved .