鮨は ・・・さぁ〜 
ほどよく暖かく美味しい銀シャリに 
きちんと仕事をほどこしたネタ。 
しっかりしていて 口の中で 
はらはらと とける握りの職人技。 
時々食べたくなる イナセな味。

  たまに買い物に出かける新宿で 美味しい食事がしたい時、小田急デパートの12〜14階 マンハッタン ヒルズに行く事にしている。 2006年秋 リニューアル工事も終え 日本料理のなだ万 てんぷらの天一  とんかつの和幸  グリル満天星 等の名店が軒を連ねている。  駅の近くで これほど便利で気軽に美味しい食事が出来る環境を用意した小田急と参加各店に拍手を贈りたい。 

  なかでも 私は、福助さんのお鮨のお世話になる事が多い。 毎月というわけではないが 数ヶ月に一度は訪れる。 鮨ネタについて それほどの知識があるわけでもなく ただ美味しいお鮨が食べたいというだけの私に もっとも適しているのがカウンター席だと思っている。 鮨職人の仕事を間近に眺める事ができて、わからない事をたずねたり お薦めの旬を教えてもらい お話が直接聴けるカウンター席が好きなのだ。

  福助の K さんの握る鮨が 私は好きだ。 白く丈の短い帽子を目深にかぶり 小さめの身体で ポンポンというようなリズムに乗って 美しく握ってくれる。 ケースからネタを取り出し 包丁を入れ ケースに戻す。 左手の親指と人差し指で ネタを軽くホールドすると同時に、右手の指先は ネタに丁度見合うシャリを運び上げ 形を整える。 流れるように左手指先のネタの上に 右手指先のシャリが乗せられ、一度二度返しながら握りを決め さっと客の前に並ぶ。 シャリは ちぎらず ネタと合わせて欲しいし、握りも手際よく仕上げて欲しいのだ。 ネタにシャリをあわせてから シャリをちぎるような所作は あまり粋とは言えない。  鮨は 客の前で 素手で握る誤魔化しの無さ 潔さ・・・流麗な流れに乗って魅了させていただくのも 楽しみの一つと言わせて頂きたい。 モタモタしたり 一度ネタに合せたシャリを ちぎる行為は 野暮ったく見えてしまうのだ。 さらに ちぎったシャリを シャリ桶に放り込む所作は 美しいとは到底言えるものではない。 そういう暗黙のルールが私の中にあって Kさんは、それを満たしてくれる人なのだ。  そうやって握ってくれた鮨は 美味くないはずがない。 

  季節によって美味しいお鮨は違うけれども・・・私のお気に入りは 貝 光物 白身 の順。 貝の旨味と香りは 魚や肉とは明らかに異質だ。 噛締めて飲み込んだ後 息を鼻から抜くと さわやかな磯の香りを楽しむことができる。  鯖やコハダは 身の美味さもあるけれど 皮と身の間のわずかな隙間に一種独特の旨味を感じ、白身の魚は噛締めると舌の奥や 下顎から咽喉の近くで 旨味を感じる。 鮨はネタによって美味さを感じる所が違うのだ。 握ってくれた鮨はモタモタしないでさっさと食べる。 鮨を楽しむ時 私には パッパ チャッチャ という自分のリズムで食べたい。 だから私は、知人と一緒に鮨屋には行かない。 ましてや会食の席に使う等ありえない。 だらだらとお話しながら鮨を食べるなんてできない相談なのである。 

  普段 お酒を嗜む事のない私だが こういう美味しい食事には お酒が欲しくなるのである。
美味しいお酒は 美味しいお料理を際立たせ 楽しさを膨らませてくれるのだから。 ただし適量に留めることにしている。 なぜなら 量を超し 酔いがまわると 味が分らなくなるから。  お〜 もったいない。


  いつでもさ・・・ 食べたいと思った時に 美味いお鮨が食べられる。 
人生 それぐらいが丁度いい・・・。


追伸1 小田急のレストランガイドのhp 福助さんのページの写真・・・カウンターの右端の人が たぶん Kさんです。

追伸2  普段着で ふらりと一人でやってきて カウンターに座った初老の紳士は、なれた雰囲気で つまみとお酒を注文した。
     気がつくと 彼は マイお箸で 料理を楽しんでいた。 テーブルには 持ち主に似合いの素敵な意匠のお箸入れ。
     佇まいが とても自然でかっこよかった。


                                            2007年5月 記

【追伸3】

  また福助に行ってきた。 私の食いしん坊は 直らないらしい。  



鮨処 銀座 福助さん


遠くへ行きたい・旅物語
Travel to Myanmar
Mr. Yang. All right resreved .