バガンの夜明けを見に行こう


Old Bagan  Aye Yar Hotel  朝 4時。
昨夜からの雨は、まだ降り続いている。 

 Aye Yar Hotel Jr.Suite room



雨季が終わり 乾季に変わろうとする10月。   昨夜は激しい雷雨だった。 
ホテルのロビーや階段は雨漏り。 雨漏りの所にバケツやボロキレが置いてある。 その努力もむなしく あたりは水浸し。 雷鳴が建物を震わせ 雷光は 暗い夜の庭を昼間の様に浮かび上がらせる。  雨は滝のように激しく大地を叩く。 叩きつけられた雨は、細かい水の粒子となって ホテルの中まで入り込み 息苦しい程に まとわりついて来る。  その雨が 明け方になっても降り続いているのだ。

4年前 1998年の訪問の時は 寝過ごして見られなかった バガンの夜明けの風景。 今回はバガンの夜明けを見に行こう。 今度の旅の目的だ。 今回滞在したのは コロニアルの雰囲気が漂う Aye Yar Hotel ・・・オールドバガンエリア イラワジ川沿いに建つ 比較的古いホテル。 部屋は広く 天井も高い。 床は、チーク材の無垢の一枚板。 漆喰ふうの壁には遺跡風の石のレリーフ。 多少老朽化しているが 趣のあるホテルだった。 

ロビーに降りて行くと、ベルマンが立っていた。 彼の名前はフォーゾー君。 彼はニコニコ微笑みながら言った。

「おはようございます。 昨日 頼まれた自転車を用意しました。」
「ありがとう。 バガンの夜明けを見に来たのだけれど あいにくの雨だね。」
「この雨は、もうすぐ止みますよ。」

彼の言うとおり 間もなく雨は止んだ。 20年ぶりに自転車に乗る妻は、ホテルの前の庭で練習をする事にした。 しかし 自転車が大きくて 足がつかない。 ペダルを漕ぐのも大変だ。 安定感がない。

「彼女には大きすぎるよ もっと小さい自転車は無いの?」
「残念ながら このサイズだけです。」

あたりは真っ暗だ。 街灯もない。 自転車にはライトがない。 練習をしている妻の後姿を見て 自転車で行くのはあきらめる事にした。 すると 彼が言った。

「もしよろしければ 僕が奥様を乗せて Ywa Haung Gyi  まで行きましょうか?」
「えっ? いいの?」
「もちろんです。」

彼はニコニコしながら そう言った。
彼のご好意に甘える事にした。
妻を後ろに乗せ フォーゾー君の自転車が行く。 私は彼の後ろを付いて行く。 あたりはまだ暗い。 タラバーゲートを抜けて 右折する。 舗装が切れて 雨に濡れた砂地の道に変わる。 アーナンダー寺院の横を通り 舗装されたアノーヤター道路に出る。 しばらく進むと フォーゾー君の自転車は、左手の暗闇の中に入って行った。 そこはYwa Haung Gyi の入り口だったのだが 暗くてわからなかった。 
 
三人で 二階のテラスに上り 夜明けを待つ。 次第に明るくなるバガンの空。 アーナンダー タビニュイ ティーローミンロー スラマニ ダマヤンジー など大型パゴダのシルエットが青紫色に浮かび上がってくる。  雨は上がっていたが、くもり空だった。 テラスの上は前日の太陽の熱が残り暖かい。 ふたたび 雨が降り始めた。 日の出は今回も見る事ができなかった。 パゴダのシルエットだけでも写真に収めようとカメラを取り出すが、バッテリー切れで動かない。 天気だけでなく 電池にも見放されたような気分になったが、またミャンマーに来る理由ができた・・・と明るく考え ホテルに引き上げる事にした。

雨上がりの道を自転車に乗り帰る。 明るくなった道端に蛇がいた。
「It's a snake !」
私が叫ぶ。 振り返ったフォーゾー君の顔は真剣だった。 かなり大きな蛇だったが、車に轢かれて死んでいる事がわかると 彼の顔にいつもの笑顔が戻った。  

バガンには蛇がいる。 地元の人の話では 強力な毒を持った奴がいるそうだ。 暑い日などは 涼しいパゴダの中にいる事もあるそうだ。 人があまり出入りしない小さなパゴダに入る時は、注意が必要だ。

2002年10月 ミャンマー バガン



追記
Ywa Haung Gyi は、二階のテラスに上る階段の途中で 天井が低くなっている所がある。  懐中電灯を持って案内してくれるおばさんがいて 「あたま あたま ね」 と日本語で 注意を促してくれる。 日本語だけでなく 英語 中国語 イタリア語 フランス語 ドイツ語・・・いろいろ使い分けている。  このおばちゃんの名前は マトエジーさん。 ミャンマーで活躍する日本人を紹介する日本のTV(SANAYの西垣さんが現地でアレンジで関わっている) にも出たことがあるので ご存知の方も多いだろう。 後日 僕は このマトエジーさんにお世話になる事になるのだが、この時は会えなかった。 





遠くへ行きたい・旅物語
Travel to Myanmar
Mr. Yang. All right resreved .