バガンの夜明けを見に行こう U


3度目のバガン。

1998年は寝過ごして見られず、2002年は雨で見ることができなかったバガンの夜明けを見るために 今年もやってきた。 明るいうちにYwa Haung Gyi のテラスに上り 太陽の昇ってくるであろう方向と その光を受け どのパゴダが どんな感じに見えるかイメージを作る事にした。 テラスへのトンネル階段を登る時に マトエジーさんと会った。 彼女の事は知っていた。 ミャンマーで活躍する日本人のテレビ番組に出演していたのだ。 彼女はテレビで見たとおり まあるい顔に 大きな瞳 満面の笑みを浮かべ 

「あたま あたまね〜。」
「 I know you in japanese TV program. In TV you can speak English French Italy Chinese etc.」

すると彼女は 笑顔で頷きながら いろいろな国の言葉で 頭上注意を促す言葉をしゃべってくれた。

「Mind your head  小心小心(シャオシン シャオシン) ・・・」

笑いながらテラスに出る。 テラスを一回りして確認する。 日の出の方向から考えると Ywa Haung Gyi のテラスから アーナンダー寺院を見るのが良いようだ。 アーナンダ寺院の金色の塔が 昇る太陽を受けて ひかり輝く姿をイメージしてみた。  いいかもしれない。



翌日の早朝。

Bagan Thande ホテルの入り口には暗いうちから 客待ちの馬車がたむろしている。 馬車のドライバーが寄って来る。 価格交渉の末 Ywa Haung Gyi  までの往復を頼む。 

馬車に揺られながら 真っ暗なオールドバガンを行く。 夜明けの空気は冷たかった。 馬車に乗って風に吹かれているうちに少し寒くなって来た。 何か羽織ってくればよかった。 一時間も揺られていたら 冷え切ってしまうのではないかと思うほどだ。

馬は夜目が利く。 タラバーゲートレストランを通り過ぎ しばらく走った所で右折したのだが 私には暗くて道が見えない。 右に左にカーブしながら進んでいく。 顔に小枝があたるので 狭い小道を進んでいるらしい。 まったく見えないので いきなり小枝が顔にピシ・・ピシ・・とくる。  あまり嬉しくない。  
今度は顔に蜘蛛の巣が引っかかった。

「うわ〜  It's a spider's net !」
「Hahaha・・・ Morning lucky you.」
「Can you see this narrow way in such kind of darkness?」
「Ya  almost  because I live in here. My horse Maung-maung can see everything. No moon No star very dark night Maung-maung dose not lost way. Maung-maung is very clever girl. 」  

やはり 馬は夜目が利く。

馬車は 暗闇の中をパコパコと 蹄の音をたて行く。 車輪をキィキィきしませ進む。 Ywa Haung Gyi に到着する。 馬車も自転車もない。 まだ誰も来ていないらしい。 テラスに通じる階段へ進むと奥から懐中電灯の光が見えた。 マトエジーさんだった。 彼女の家は パゴダのすぐ裏手にあり、パゴダで みやげ物を売っている。 早朝の来訪者に テラスへの階段を案内するために来ていた。 彼女は私の顔を見て すぐに 「You ! 」と声あげた。  私は「Good morning   小心 小心 」 と 言いながら階段を登った。 後ろから彼女の笑い声が聞こえた。

テラスの上のレンガは 昨日の太陽の熱が蓄熱されていて暖かい。 あたりはまだ肌寒いので テラスに腰を下ろして日の出を待つ。 お尻が温かくて気持ちいい。 小鳥の声が聞こえ 鶏が鳴き始めた。 

その時突然 お腹がクルクルと音を立て始めた。 ほどなくトイレに行きたくなった。 まずい 馬車でお腹が冷えたらしい。  テラスを降りて 馬車のドライバーに告げた。

「Could you please go back to Hotel. I want to go rest room. ・・・ I want lavatory .」

彼は ここで待つ様に言うと 寺院の裏手にあるマトエジーさんの家に行って頼んでくれた。  寺院の塀を跨いで マトエジーさんの家に行くと ちょうど朝食の準備をしているところだった。 彼女に トイレを使わせてほしいと頼むと 家の裏手へ案内してくれた。 そこは 母屋から独立した離れで 細い四本の支柱に支えられた 畳半分弱の高床式の小部屋だった。 階段を登るとぐらりと揺れるが、ヘビー級の私が乗っても大丈夫だった。 中に入りドアを閉めると 壁は小枝などを編んだ様な作りになっていて まことに 通気性 視認性が良く、匂いも気にならない清潔感ある場所だった。 構造的には 所謂 直下式のポットンではなく、水を流すと 傾斜のついたパイプを伝って離れた場所に落ちる様な仕掛けになっていた。 彼女の家のトイレに救われた私は、お礼を言い 謝礼の紙幣を置いてテラスに戻った。 暖かいテラスの上に腰を下ろしたかったのだ。  

周囲が明るくなってきた。 今日は雲は高く 小さい。  きれいな日の出が堪能できるはずた。 
マトエジーさんがテラスに登ってきた。 
  
「Would you like to drink a hot tee? 」
「Thank you I want to drink something hot one 」

彼女は テラスの下に向かって大声で叫んだ。 下から返事が聞こえ、しばらくすると子供がポットに入れたお茶とクッキーを運んで来た。 彼女が入れてくれた暖かいお茶は 冷えた身体を温めてくれた。 
マトエジーさんと二人ならんで 暖かいテラスに腰掛け 暖かいお茶をいただき 昇る太陽に照らされ 薄紫色から けだるいピンク色 そして 鮮やかなオレンジ色に変化していく雲を眺めていた。 ダマヤンジー寺院の近くから離陸した熱気球が二機 テラスの上空をゆっくりと通過していく。 時折 バーナーに点火し ゴー という音を響かせて 上昇していく。

朝陽を受け アーナンダー寺院が黄金色に変わっていく。 
やがて 朝の読経の声が聞こえて来た。
あちこちから鶏の鳴き声が聞こえる。 
パゴダの合間から 炊事の煙が漂い 次第に大地の色も変化していく。 

ねぇ  ここは天国かい ? ? ?



2003年11月  ミャンマー バガン



遠くへ行きたい・旅物語
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Mr. Yang. All right resreved .