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脱原発に向けて思うこと

原子力より原始力(2012.9.23)

 東電福島原発事故は、私にとっても生き方を根底から問い直す大きな出来事となりました。同じ過ちを二度と繰り返さないためにも、原子力を必要としない社会とはどんな社会なのか?この機会に考えてみました。
 エネルギーの消費量は、経済の成長と共に増え続けてきました。逆に経済が成長することにより減少したものが、自然環境と一次産業従事者及び農村社会です。人口増加、大量生産、大量消費、大量廃棄を前提にして組み立てられた成長シナリオを支えたのが、原子力(核と原発)だと思います。たまたま地震が契機になったとはいえ、東電福島原発事故は、この成長シナリオの破綻が目に見える形で現れた一つの現象として捉えるべきだと思います。
 私は、原子力を必要としない社会を実現するためには、一次産業従事者を増やし、農村社会を再興することが必要不可欠と考えます。一次産業は、他の産業に比べて格段にエネルギー消費量が少ない仕事です。それは、太陽エネルギーを取り込むことで生長する植物や、その植物などを餌とすることで成長する動物や魚類などを育てる仕事だからです。農業の中でも有機物の循環を基本とする有機農業は、環境負荷が少なくエネルギー消費量も少ない農法です。
 皮肉なことに、東電福島原発事故により放出された放射性物質は、一次産業従事者を苦しめる結果をもたらしました。食に対して関心が高まることは良いことですが、今まで、農薬や食品添加物などに含まれる化学物質(環境ホルモン)に対して全く関心を示してこなかった人たちまでもが、放射性物質に対しては異常なまでに反応し、混乱が起こっています。正しい判断基準を持たない消費者により引き起こされる風評被害によって影響を受けるのは生産者です。今まで、少ない収入の中で食を支えてきた人たちが、原発事故により、さらに苦しめられてしまう。こんな理不尽なことはありません。
 名古屋生活クラブさんにお世話になって感じることは、生産者は、意識の高い消費者と、生産者側に軸足を置く販売関係者の支えがあって初めて質の良い野菜を育てることが可能になるということです。安いものを求める消費者を対象とした場合には、より多くのものを生産し、流通させなければ同じ収入が得られません。生産に必要なエネルギー量も増し、廃棄物も増えます。当然ながら環境への負荷も増大します。
 昨年4月、当時首相だった菅直人さんは復興構想会議を立ち上げ特別顧問(名誉議長)に哲学者の梅原猛さんを招きました。会議の中で梅原さんは、原発事故による被害を「文明災」という言葉で表現し、次のように述べています。「原発を使って、人間の生活を豊かにし、便利にする。そういう文明がまさに災害を起こした。今、その文明が裁かれている。この文明の裁きに対してどういう答えを出すか。人間の文明が変わらなければならない。」
 日本の歴史を遡ると、高い精神性と芸術性を持ち、約1万年間続いた縄文文化に行き着きます。文明を変えるためにも、今こそ縄文人の叡智に学びたいものです。(2012年5月名古屋生活クラブへ寄稿)

東電原発事故の真相に迫る(2012.3.30)

 東電福島第一原発事故の本当の理由は何か?政府は、地震と津波によって、全電源喪失状態となり、原子炉の冷却ができなかったことを原因としている。しかし、専門家の中には、地震によって圧力容器や格納容器につながる配管が損傷を受け、冷却材が喪失したことが原因であると指摘している人もいる。(元原子炉製造技術者の田中三彦さんなど)
 ドイツZDFが製作した「フクシマのうそ」という番組は事故の真相に迫る内容だったので紹介する。
 アメリカ側の点検主任として福島第一原発で作業していたケイ・スガオカ氏は、もともと原子炉には欠陥(蒸気乾燥機に亀裂と180度反転の取り付けミス)があったと指摘している。スガオカ氏からの告発を受け、2001年に東電が報告書を改竄していることと、このようなことを続けているとやがて重大事故が起こることを新聞で訴えたのが、前福島県知事の佐藤栄佐久さんだった。この記事により、東電の原発17基全てが一時停止となった。当時の調査委員会は、東電が以前から重大な事故を隠蔽し、安全点検の報告書でデータを改竄していたことを明らかにした。これにより東電の役員は一新され、このとき代表取締役に就いたのが現会長の勝俣恒久である。その後、佐藤知事に対する復讐が始まり、不正土地取引の疑いをかけられた佐藤さんは、2006年9月5期目の任期途中で辞任に追い込まれた。(後の裁判では佐藤さんの無罪が確定している)
 もう一人、同じように原子力ムラの圧力によって辞任に追い込まれた人がいる。前首相の菅直人さんだ。菅首相は、事故直後、福島第一原発から撤退したいと内密に打診してきた東電に対し、撤退を認めず、職員を現場に踏みとどまらせている。原発事故の引き金は津波だったかもしれないが、それ以前に当然しておくべき対策をしてなかったことが問題で、事故の過失は責任者にあると菅さんは証言している。(福島第一原発は、冷却に必要な海水をくみ上げやすい場所の方が経済的という理由で、標高35メートルの場所から標高10メートルの位置へ変更して建設されている)
 さらに番組は、福島第一原発4号機が地震でかなり損傷していることにも触れている。もう一度大きな地震が起これば建物は崩壊し、新たな臨界が起こる。臨界が起これば、放射能は致死量に達し、この世の終わりとなるだろうと指摘している。
最後に、地震学者の島村英紀さんが、地震の揺れ速度が、これまでの予測よりずっと速まってきていることを指摘している。原発は、加速度300~450ガルの地震が来ることを想定して設計されている。(格納容器は600ガルまで耐えられるよう設計)しかし、最近の地震調査により、加速度は、4000ガルまで達していることがわかってきた。2月に東大地震研究所は、4年以内に75%の確立で首都直下型地震が襲うと発表した。島村さんは、このような地震が起こった場合には、原発が影響を受ける確率が高いと警告している。
 次の大地震がくるまで、日本人に与えられている時間はどのくらいだろうか?脱原発以外に選択肢はない。

http://www.dailymotion.com/video/xpo193_yyyzdf-yyyyyyy_news
チェルノブイリ、福島、次はどこ?(2011.4.28)

 2011年3月11日、歴史はこの日をどう評価することになるだろう。後に、東電原発震災(福島第一原発事故)は、地球上の全ての生物に大きな影響を与え、その結果、人類は価値観を変えることになった、と記されるほど重大な事態が今も福島では進行している。
福島第一原発には、6つの原子炉と、使用済み核燃料貯蔵プールがある。(原子炉建屋内)さらに、1〜6号機の使用済み核燃料を貯蔵するための共用プールが存在する。地震と津波により、稼動していた1号〜3号機(3号炉はプルトニウムを使用)の全てが、本来の冷却機能を失い、現在、仮設電動ポンプにより炉心注水が行われている。また、3、4号機建屋内の核燃料貯蔵プールは何らかの損傷を受け、外部からの注水が必要な状態である。(1、3、4号機では震災直後に水素爆発が発生している。)
東電及び原子力安全保安院が、これまでに発表した情報から判断すると、全ての原子炉(圧力容器及び納格容器)に何らかの損傷があり、炉心溶融(燃料棒の一部が溶け出す)も発生している。また、5、6号機の原子炉、ないしは貯蔵プールも何らかの損傷を受けている。これが一般的な見方だろう。いずれにしても、事態を収束させるための目処は立っていない。仮に、冷却作業が順調に進まなくなった場合には、炉心溶融が更に進み最終的には水蒸気爆発を起こす可能性もある。これが、現在の状況と想定し得る最悪の事態だろう。
 日本の原子炉は老朽化が進んでいる。地震に対する対策が不十分であることは以前から指摘されてきた。それなのに政府は、今も稼動している原子炉を止めようとしない。危機管理の基本は、常に最悪の事態を想定して動くことだから、今回の事故を受けて、まずは全ての原子炉を直ちに止め総点検するのが常識的な判断だろう。
日本には、地震に対して、福島原発よりも危険といわれている浜岡原発がある。現在、原子炉が5機あり、1、 2号機は廃炉に向け運転終了(2009年)。3号機は点検中。(5月稼動開始予定)4、 5号機が現在稼動している。ご存知のように、浜岡原発は、活断層の真上に建設された原子炉だ。まずは、浜岡を停止させることが喫緊の課題である。
今回の原発事故は、人によって捉え方が様々である。理由は、政府及び東電を含む全ての電力会社が、日本のマスメディアに対し、情報規制を行うよう圧力をかけているからだ。今後は、インターネットやツイッターなど情報通信事業者に対しても規制を行う可能性がある。
 原発に関する捉え方に温度差がある中、脱原発に向けてどう取り組んだらよいのか?事故発生以来、答えを探し続けている。2003年、資料改ざんの露呈により、福島と新潟にある東電の原子炉17機全てが停止した。このとき、真夏でも停電は起こらなかった。現在、地球は、地震の活動期に入っている。東海地方で次の地震が起こるまでに、それほど多くの時間は残されていない。これから日本では、放射能と付き合う時代が始まる。3.11以前の地球には二度と戻れない。原発の危険性を承知の上で使い続けてきた私たちは、更なる悲劇を回避するため、今ここで決断しなければならない。
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